オクラホマからやってきた男

学生時代に吉祥寺の芽瑠璃堂でこのジャケットを見た時は
「何だ、このおっさんは!」という驚きだけだった。その
インパクトはジャッキー・ロマックスの『Three』(これ
またデカ顔!)級であり、畏れおののいて買うことも出来
ずにいたのだった。しかしその後ジェシ・エド・デイヴィ
スがプロデュースしているという情報を得た私はやっと購
入を果たし、十字路で悪魔と取り引きし、進むべき道を間
違えてしまったのである。

オクラホマ州タルサというのは不思議とスワンプ系の音楽
家たちを輩出する土地らしい。このロジャー・ティリソン
をはじめとして、J.J.ケイル、レオン・ラッセル、ジェシ・
エド・ディヴィス、カール・レイドルなどはすべてタルサ
出身。そういえばレオンのアルバム・セッションではタル
サ・トップスなる急造バンドが招集されたこともあったっ
け。

71年にATCOレーベルから発売されたこのアルバムにはグ
ラインダーズ・スウィッチ出身のスタン・セレストや、タ
ージ・マハールのバンドに在籍していたサンディ・コニコ
フ、やはりタージやベターデイズにいたビル・リッチなど
が参加し、泥臭く彫りのある音楽に貢献している。ドラム
が横揺れビートの達人・ジム・ケルトナーであることも胆
だろう。そして勿論ジェシ・エドの粘り付く蛇のようなス
ライド・ギター!エンジニアにザ・バンドのブラウン・ア
ルバムでおなじみのジョー・ザガリノが選ばれた点にも注
目したい。ロビー・ロバートソンが書いた「Get Up Jake」
やフォー・トップスの「Loving You Is Sweeter Than Eve
r」も最高の出来!この2曲は偶然にもザ・バンドの71年
頃のレパートリーでもある。他にもロジャー渾身のオリジ
ナル「Let'Em Roll Johnny」や、ディラン、ガスリー、ド
ン・ニックスのカバーなどがきらりと光っている。

オクラホマの季節労働者たちは仕事を求めてカリフォルニ
ア州へと流れ着いたという。奇しくもそれを音楽で行った
のがロジャー・ティリソンだった。70年の10月にLAのレ
コード・プラントで行われたスタジオ・ライヴをそのまま
生々しく記録した本作にも、砂埃を舞わせるオクラホマの
風が吹き荒れているかのようだ。

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by obinborn | 2013-10-21 13:01 | one day i walk | Comments(4)  

Commented by kiku at 2013-10-21 20:09 x
「デカ顔」ジャケの名盤ですね!
私には文才がないから「かっこいい!」とか「最高!」とか叫んでいるばかりなので、このように小尾さんが的確な解説をしてくださると、本当に嬉しいですね。
ジェシエドのプロデュースの才能には感動してしまいます。
Commented by obinborn at 2013-10-22 02:33
やっぱりいつ聞いても良いアルバムですね。
この前もお電話頂いたのに気が付かずすみませんでした!
Commented by kiku at 2013-12-11 19:52 x
小尾さんのツイッターでロジャー・ティリソンが亡くなったと知り、とても残念です。
Commented by obinborn at 2013-12-12 18:06
きくちゃん、わざわざお知らせありがとう!ロジャー・ティリソン残念ですね。追悼うべく今日彼のLPを3回聞きました。

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