漆黒のキング・クリムゾン

キング・クリムゾン史上最も呪われたアルバムと言ったら『Ea
rthbound』の他にないだろう。72年の2月から3月にかけて
行われたアメリカ公演から収録されたライヴ作だが、ミキシン
グ・コンソールからカセットテープに録音されたという音質は
劣悪であり、そのためか英Islandは廉価レーベルのHelpからの
発売となった。しかし不本意だったロバート・フリップは本作
をその後長年クリムゾンのカタログから抹消してきた。今でこ
そCDとして容易に聞けるようになったが、日本では72年当時
発売されなかった故にコレクターズ・アイテムと化したのであ
った。

そんな経緯はともかくクリムゾン史上最もブルージーで混沌と
した演奏が堪能出来るのは確か。前作『Island』と同じくフリ
ップ以下、ボズ・バレル、イアン・ウォーレス、メル・コリン
ズというカルテットでのプレイだが、スタジオ・アルバムにあ
った叙情性のかけらもなく、ただただメタリックに音の塊をぶ
つけ合う様が痛快だ。ナパーム爆弾で破壊される未来図「21世
紀の精神異常者」のフリーキーなジャズ・イディオムに始まり、
演奏はPeoria〜船乗りの話〜Earthbound〜Groonと続き、ど
の局面でもフリップの神経症そのものといったギターと嗚咽す
るコリンズのサキソフォーン各種がリード役を果たすのだが、
それと対を成すような骨太なリズム隊(バレル=ウォーレス)
が実に素晴らしい。しかしこの良さが解る人はごく少数派だっ
たようで、かのフリップはバレル=ウォーレスにこう言い渡し
袂を分つ。「きみたちの演奏は下品だ!」

目まぐるしく入れ替わるメンバーとともにクリムゾンの音楽性
が変遷していったように、この『Earthbound』もフリップに
とっては通過点に過ぎなかったのだろう。しかしここでのハー
ドコアな演奏が呼び水となって、来るべき黄金時代(『太陽と
戦慄』『暗黒の世界』『レッド』『USA』)の序章となったこ
とに注目したい。同じインプロヴィゼーションの嵐といっても
キャプテン・ビーフハート&マジック・バンドのような黒人音
楽への愛情や理解はまったく感じ取れないが、この混沌とした
サウンドを私は愛する。まるで断末魔のような終曲「Groon」
が奇声を上げながら漆黒の闇へと疾走していく。

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by obinborn | 2013-10-27 23:30 | rock'n roll | Comments(0)  

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