サザンライツと双六亭

そこにギターがあって、ベースがあって、ドラム・キットがある。
彼や彼女はそれらの楽器を取り出しながら、すぐ近くにあるスネ
アやハットの位置を確かめながら、アンプの微調整をしながら演
奏を始める。ロック・バンドの始まりだ。そんな彼らはけっして
目新しくはないし、最新モードを着こなしているわけでもない。
ましてどこかの誰かのための未来図をなぞっていくわけでもない。
にもかかわらず彼らの演奏からは広がっていく何かが確かにある。

そんな興奮を思い起こさずにはいられないサザンライツと双六亭
のツーマン・ライヴを2日は三鷹のバイユーゲイトにて。ザ・バ
ンドからキンクスまでのロック・クラシックスを土臭い響きのな
かにじわりと溶かしたサザンライツといい、雑多な音楽背景のな
かから自作曲をたぐり寄せる双六亭といい、清々しいまでの演奏
に筆者の気持ちも次第に晴れ渡っていく。サザンライツは彼らら
しい横ノリを活かしながら、翻訳した日本語詞で歌の数々を自分
たちの暮らしと結びつけていくし、双六亭はフォーピースならで
はの研ぎ澄まされたアンサンブルをじっくりと聞かせる。意訳と
いえば双六亭もロス・ロボスの「When The Circus Comes To
Town」をイメージの広がりがある日本語へと置き換えていたっ
け。日本語詞を試みたアッキーこと鈴木晶久の着想が素晴らしい。

サザンライツがウィルバート・ハリソンの「Let's Work Togeth
er」やオイリー・ラグスの「Come Up And See Me Anytime」
といった新ネタを披露するかと思えば、双六亭は前回のギグと
同じくザ・バーズの「So You Want To Be A Rock N Roll Star」
を取り上げたり、先日訃報が届いたルー・リードのためにヴェル
ヴェット・アンダーグラウンドの「What Goes On」を演奏する。
そんな両者を観ているとわずか50年をちょっと過ぎたばかりの
ロック音楽にも本当にさまざまな場面があったことに気が付かさ
れる。何も探訪とか継承とかいった大掛かりなことではないかも
しれないが、サザンライツと双六亭それぞれの演奏には胸を焦が
すような瞬間が随所に散りばめられていた。まるで試合を終えた
チームのように互いを称え合う終演後の彼らはどうだろう。そう
した光景ひとつひとつにも、音楽が確かな輪郭を描きながら聞こ
えてきた夜だった。

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終演後に双六亭の中原由貴さんと
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by obinborn | 2013-11-03 09:23 | rock'n roll | Comments(0)  

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