11月のホンク

ついこの前まで半袖とサンダルだったのに、
町はいつの間にか冬支度。そんな季節の移
ろいの早さに戸惑いつつも、14日は吉祥寺
のスターパインズ・カフェにて東京ローカ
ル・ホンクを。彼ら今年最後(ソロやニュ
ーイヤーズ・フェスを除いて)のライヴと
なったが、この年を締め括るべく臨んだワ
ンマンでのたっぷり3時間、全21曲にも
及ぶ演奏に心が躍った。

今回はメンバー四人が車座となって向き合
うスタイルが採用され、会場の中央に置か
れたステージを観客が円形となって囲む。
そんな寛いだ雰囲気は、まるで暖を取るた
めに集まった友人・知人たちのよう。ライ
ティングも効果的に、第一部はアコーステ
ィック、二部はエレクトリックで彼らの歩
みを凝縮していく趣向だ。前身のうずまき
時代を含めればおよそ20年近くにもなる
活動歴を誇るホンクだが、一貫してアプロ
ーチしてきたのは日本語のきれいな響きと、
それを過不足なく届ける無駄のないバンド・
アンサンブル。なんでもうずまき時代には
「空調を切ってください」とお店に伝える
こともあったようだが、そんな小さな音へ
の意識は今なお汲み取れる。エレクトリッ
ク・セットでの逞しいサウンド~ジャム展
開も魅力的だが、アコースティックで奏で
られたパート1では木下弦二のソングライ
ティングの根っこというか、歌の息遣いに
まで触れるような思いがした。

まるでブルガリアン・ヴォイスのように厳
かなコーラスの輪唱から始まり、1曲めの
「自然ソング」へと「おいのりのうた」へ
と引き継がれていく。序盤のそうしたさり
気ない流れが次第に起伏を描きながら、や
がて大胆なまでのエレクトリック・サウン
ドへと逞しく変貌していく様はまさにドラ
マティック。「心の行進」や「サンダル鳴
らしの名人」といったうずまき時代の名曲
から「夜明けまえ」と「夏みかん」で冴え
渡るアカペラ、またはホンク流セカンドラ
インと盆踊りが合体したような「お手手つ
ないで」やメロディの輪郭が優しい「さよ
ならにありがとう」といった最新のナンバ
ーまで、今に至る彼らの歴史が万遍なく網
羅された選曲だったと思う。久し振りに聞
いた「遠い願い」や「はじまりのうた」に
も歌詞と情景とが同時に皮膚へと染み込ん
でいくような鮮烈さを感じずにはいられな
い。

簡素な言葉の連なりのなかに含みを持たせ
るといった意味では俳句の世界にも通じる
けれど、けっして諦観めいたものではなく、
彼らは自分たちが育った品川〜目黒区辺り
の商店街や人々の暮らしを映し出してきた。
ことさら大袈裟に愛やら平和やらを叫ぶ曲
はひとつもないが、もしも明日突然失われ
てしまったならすごく悲しいだろうな、と
思わせる愛おしい日常の光景をホンクたち
は掌のなかにそっと握りしめ、慈しんでみ
せる。特定の誰かを激しく糾弾するような
曲も一切ない。しかしながら後先までずっ
と残っていく”長持ちする歌”とは、きっと
身近な光景のなかで拾い上げたものである
はず。今夜の演目で言うのであれば品川の
工場街を切り取った「昼休み」などは、そ
んな彼らの真骨頂に違いない。

ホンクのライヴに通い出してから筆者は6
年が過ぎようとしているが、とくにここ数
年は彼らがまた一つ高い山に登り切ったよ
うな達成感を覚える。腹の底から出してく
るコーラスの温かみは勿論のこと、ギター
とベースとドラムスが互いに呼吸し、弾み
ながら周りの景色を瞬時に塗り替えていく
ミラクルな場面がこの日も幾度となく訪れ
た。ホンクがいなくても今日が終わり昨日
となりやがて一年が過ぎる。それでも彼ら
の音楽を知った幾多の人たちは、きっと明
日も灯火をかざしながら歩んでいくことだ
ろう。

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by obinborn | 2013-11-15 01:33 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

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