寡黙なギタリストに別れの挨拶を

ドクター・フィールグッドのライヴ・アルバム『Stupidity』
が76年の秋に全英で第1位へ躍り出た時、そのギタリストが
将来ロジャー・ダルトリーとコンビを組むとは誰も予想しな
かっただろう。それでも歳月が経ち、どんどん不純物を洗い
落としながらこういう出会いへと結び付いていくのだから、
ぼくたちは時間という試練に感謝しなければいけないのかも
しれない。そんな風に彼らの新作『Going Back Home』を
聞いた。

77年にフィールグッズを脱退して以来ずっと自分で歌ってき
たウィルコが、自作曲を専任ヴォーカリストに委ねたのは今
回が初めての試み。ウィルコのヘタウマな歌もギタリストが
歌う風情があってぼくは大好きだが、こうして本格的なシン
ガーによって激しく熱を帯びていく様に、ブリティッシュ・
ロックの最もピュアな部分を感じずにはいられない。どうい
う魂が互いを呼び合ったのかは解らないし、二人ともけっし             て器用なタイプのシンガーでもギタリストでもない。しかし
ながらそれ故に彼らの音楽からは何とも言えない真実味が伝
わってくる。

ミック・グリーンとウィルコの共作Going Back Homeに始
まり、憧れのディラン・ナンバーを挟みながらフィールグッ
ズのファーストに収録されていたAll Through The Cityで終
わる。わずか30分ちょっとのランニング・タイムだが、その
なかに放り込まれたドラマが見える人にはきちんと見渡せる
はず。当然ウィルコは白鳥の歌を意識しながらアルバム作り
に臨んだはずだが、安っぽい自己申告や哀れみを呼ぶような
感傷は一切なく、寡黙な板金工のようにただひたすらギター
をザクザクと切り込んでいく。そんな彼の姿に崇高なものを             感じるのはけっしてぼくだけではないだろう。

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by obinborn | 2014-04-03 16:55 | rock'n roll | Comments(0)  

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