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3つのコードが気持ち良く鳴る日〜グレアム・パーカー&ザ・ルーモア

どういう経緯で実現したのかは定かでないが、ザ・ルーモアが
22年ぶりに再結成してグレアム・パーカーとともに音を奏でた。
それが彼らの新作『Three Chords Good』(2012年 primary
wave)だ。スタジオに集まり、いざ一緒にカウントを取り演奏を            始めたら思いのほかうまくいった…..そんな感じだろうか。むろ
んやり過ごしてきた歳月のぶん音は枯れ、歳相応の落ち着いたも
のへと変化しているのだが、無駄な音が一つもないなかで彼らは
含蓄を生み出していく。その手数があった連携はぼくに一人のシ
ンガーと一つのバンドの優れた信頼関係を思い起こさせる。

実際ブリンズリー・シュウォーツやマーティン・ベルモントが
ギター・ソロを取る場面は殆どないし、ボブ・アンドリュース
のオルガンなりピアノはどこまでも奥ゆかしい。アンドリュー
・ボウナーとスティーヴ・ゴールディングのリズム・セクショ
ンに関しては、ただひたすら片隅でベースを鳴らしスティック            を握っているといった影絵のような印象だ。

しかしながら、それがどんなに尊いものであるかはきっとこの
アルバムを繰り返し聞き直す頃に解ってくるはず。かつてボブ
・ディランに憧れ、ヒッピー・ムーヴメントにかぶれながらモ
ロッコまで旅をし、生まれ故郷のロンドンに戻ってきてからの
グレアムは自分で作った歌を自分で歌った。それがたまたま英
国のパンク・シーンと重なった。神に歯向かって疑問を投げか
ける歌を歌った。まるでニール・ヤングのように黄金の心を求
めたこともあった。月が夜空をそっと照らす時に寄り添うバラ
ードもあった。

この新作ではそれらの曲が思わぬ伏線になっている歌もあるし、
アルバム表題曲のように「この3コードはいいね!」と自嘲と
自信をないまぜにする歌もある。年月がグレアムとザ・ルーモ
アを片隅に追いやったのではない。彼らが再び年月を克服し、
時の流れを味方に付けたのだ。この新作を聞くとそんなことを
思わずにはいられない。

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by obinborn | 2014-04-05 18:22 | rock'n roll | Comments(0)  

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