彼女が写し取った写真

戦場ジャーナリストの山本美香さんが亡くなってからもうすぐ
一年と半年が経とうとしている。その間ぼくは図書館で借りた
彼女の何冊かを読み、幾つかの感想を抱いた。真摯に山本さん
の生涯を描いたものもあれば、ヒロインの死去に便乗したいさ
さか丁寧さに欠ける書物もあった。それでもぼくはある人の、            それも実際には出会うことが叶わなかった人の断片を伺うこと            が出来た。

冷戦以降の世界情勢。それは大国どうしの対立が氷解したのと
同時に、新たに起こった局地的な民族主義の台頭(と制圧)の
繰り返しだったように思う。例えばクリミア半島へのロシアの
侵攻は少なくともぼくをブルーにさせる。クリミアに関しては
誰もナショナリズムに引導されたわけでもないだろう。だから
こそ余計に悔しい。

山本美香さんの生涯を追っていくと、ある一人の多感な女性が
無垢なままではいられなく、イラクを始めとする戦場へと駆け
出していく様子をぼくなりに理解出来る。そこにあるのはイデ
オロギッシュな思惑ではけっしてない。むしろフォトグラファ
ーとして報道家として、彼女がありのままを伝えようとしてい
る姿勢だけが凛として伝わってくる。フィルター越しに映るバ
グダットの子供たちの表情は、お昼をみんなと一緒に食べるぼ            くたちの日常といささかも変わることはない。

ぼくは物事の判事官ではない。ぼくはけっして思想的な思惑に
巻き込まれない。山本さんが写し取った写真のなかに喜びの表
情を感じ、離れ離れになった悲しみの気配を聞き取り、残酷過            ぎる運命のことを思う。

山本さんが残された写真のなかに、ぼくは自分の知らない土地
の自分が知らない人々のことを聞き取りたい。

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by obinborn | 2014-04-12 00:50 | one day i walk | Comments(0)  

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