スモール・コンボでR&Bを〜ライ・クーダーの場合
Talkを取り上げた当時はまだミルトンの原曲を知ら
なく、単に心地好いリズムだな〜程度の印象だった
のですが、後になってミルトン版を聞くと、これが
汗唾が飛び散るような熱血ソウルで大変驚いた記憶
があります。そんな解釈〜アレンジの面白みを伝え
てくれたのもライの功績の一つですが、70年代最後
のアルバムとなった『Bop Till You Drop』(79年)
は、そんな彼のR&B路線を更に推し進めた作品とな
っています。エルヴィス・プレスリーのLittle Sisterに
始まり、アーサー・アレクサンダーのGo Home Girl
へと連なる。更にはアイク&ティナ・ターナーのI Th
ink It's Going To Work Out Fineをギター・インスト化
したり、ハワード・テイトのLook At Granny Run Ru
nを軽〜くお茶目にしたりと歌の解釈者としてライが
大活躍しています。何しろフォンテラ・バスで知られ
るDon't Mess Up A Good Thingではオリジナルに倣っ
てか、チャカ・カーンのヴォーカルをフィーチャーす
るという念の入れよう。
演奏陣ではデヴィッド・リンドレーのギターがもうひ
とつの声になっていることが感動的です。以前のクリ
ス・エスリッジ(ブリトーズ〜L.Aゲッタウェイ)に
代わってこの頃にはティム・ドラモンドがベースを弾
くようになったことも、よりリズム・コンシャスな方
向へと舵を切ったライを象徴するかのようです(ティ
ムはニール・ヤングとの活動以外にジェイムズ・ブラ
ウンとの接点も)そしてすっかり馴染んだ名パートナ
ーであるジム・ケルトナーのドラムスとミルト・ホー
ランドのパーカッションが隠し味になっています。曲
によってはロニー・バロンがオルガンだけでなく、ギ
ターを弾く場面も貴重だったりして。
79年といえば甦るのがこのアルバムが「ロック音楽
史上初のデジタル・レコーディング」と謳われたこと
かもしれません。今聞き直すと解像度には優れている
ものの、トータルな質感がイマイチ(というか痩せ過
ぎ)という典型例なのですが、それでもライや演奏陣
の優れた音楽がそのハンデを十分に克服しています。
今ふと思ったのですが、ホーン・セクションを伴わな
いスモール・コンボによるリズム&ブルーズ大会とい
う見取り図が、ひょっとして当時のライ・クーダーに
はあったのかもしれません。ちなみにこのアルバムで
私が一番好きなトラックは、ゴスペル・ライクなTro
ble,You Can't Fool Meです。ボビー・キングやジミー
・アダムスによるコーラスの盛り上がりもさることな
がら、私はこの曲でライとリンドレーのシンコペイト
感覚に優れたリズム・ギターの面白さに気が付いたの
でした。
by obinborn | 2014-06-01 18:36 | rock'n roll | Comments(3)
に加えてこのギターのオトですから、従来のファンは戸惑いました。全体のR&Bサウンドは私も大好きです!