イアン・マクレガン&ザ・バンプ・バンドの新作に寄せて

たった四人だけの演奏なのにどうしてこんなに豊潤なの
だろう。ギター、ベース、ドラムス、オルガン。そこに
歌と一部コーラスが加わるだけ。マックの歌にしても決
して流暢なものではない。それでもそうしたハンデを遥
かに上回る真実味を感じさせる。イアン・マクレガン&
バンプ・バンドの最新ライヴ作『At The Lucky Lounge』
を毎日そんな風に聞いている。2013年の4月に彼らの地
元オースティンで行われた録音である。

スモール・フェイシズのGet Yourself Togetherに始まり、
フェイシズのCindy Incidentallyや、ロニー・レインのKu
schty Ryeがマックのオリジナル曲と混ざる。それだけで
も彼の長いキャリアを黙して物語るものだが、現在の演
奏に込められたニュアンスや味わいは聞き手たちにもっ
とそれ以上の道のりを考えさせる。故郷イギリスを離れ
アメリカに渡った。過去の名声に頼らずゼロの地点から
音楽を再度始めた。最初のバンプ・バンドをロスアンジ
ェルスで始めたマックだったが、やがてロスの喧噪に耐
えられなくなりオースティンという最良の環境を得る。
そこからの年月こそは彼にとって人生の第二章となるも
のだったが、いつしかマックは最愛の妻を永遠に失って
しまうのだった。

それでもこの手足の行き届いた演奏を聞いていると、彼
が自己憐憫でも疑心暗鬼でもなく自分の音楽を推し進め
ていることがよく解る。むろんギミックなど微塵もない
し華麗な演出があるわけでもない。本当にここでの四人
は”ただ演奏している”だけなのだが、少なくともそれは
血の通った何かや日々の喜怒哀楽を感じさせる。シニシ
ズムが押し寄せるわけでも、冷笑主義が暮らしをじわり
と浸食していくわけでもない。

「ある夜ジェリー・リー・ルイスのライヴが終わった後、
彼のピアノに触らせてもらったんだ。その時にぼくもま
たロックンロールの歴史に加わっているような気がした
んだよ!」そんな風に謙遜するイアン・マクレガンの音
楽を聞いていると、過去と現在がふと笑みを交わすよう
な心持ちになれそうだ。

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by obinborn | 2014-06-10 19:56 | rock'n roll | Comments(0)  

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