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佐野元春と音楽ジャーナリズム

佐野元春が切り開いていったことを改めて考えてみる。
彼の革新的な音楽は勿論のことだが、そこに帯同する
音楽ジャーナリズムに対しても、彼は辛抱強く希望を
持っていったと思う。欧米ではアーティストが出した
作品が批評されるのは当り前のカルチャーであり、互
いが両者に敬意を払いながらそれぞれの仕事をしてい
る。それならば自分と批評家たちの間にフェアな態度
があるべきではないか? 佐野はそんなことを80年代
最初の頃から願っていた。

ところが、日本ではそうした文化が育まれているとは
言い難い。例えば昔ながらのバッド・ボーイズ系ロッ
クの間では「評論家なんて死んでしまえ!」というア
ティチュードがロックンロール的なカッコ良さなんだ、
と言わんばかりの風潮が根強い。批評家たちの優れた
テキストをマネージメント事務所が潰してしまうとい
う悪しき習慣が原因なのかもしれない。

佐野元春はそうしたことひとつひとつと闘っていった。
彼は自分のアルバムでときにライナーノーツを掲載し
たし、誰よりも早く立ち上げたウェブサイトでは、評
論家たちによって書かれた文章を積極的に登用してい
った。ぼくの体験からも言えることだが、佐野元春は
とても丁寧にインタヴュワーと接する。彼自身が明晰
な言葉やロジックを宿していることとも関係するのだ
ろうが、きっと佐野元春はロック・ジャーナリズムは
こうあるべきだという信念を持っているのだと思う。
まるで天体にふと浮かぶ星々のように、かけがえのな
い佐野元春の音楽。そこにぼくは応えていきたいと思
っています。

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by obinborn | 2014-06-25 21:45 | rock'n roll | Comments(0)  

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