佐野元春&ザ・ホーボー・キング・バンドをビルボード東京にて
映し出していた。初期の懐かしい曲もあったし、普段あまり
聞けないナンバーのリアレンジもあった。イントロが奏でら
れてしばらく、馴染んだはずなのにタイトルをなかなか思い
出せない曲もあった。つまり歌い手とリスナーとの間にそれ
だけ長い歳月が流れているということかもしれない。
そんな佐野元春&ザ・ホーボー・キング・バンドの演奏を28
日はビルボード東京にて。ぼくが観たのはファースト・ショ
ウだったが、「ヤァ!ソウルボーイ」に始まりニューオーリ
ーンズR&Bの楽しさが溢れ出す「ドライブ」で終わる計16曲
のなかに過去と現在とがしっかり映し出されていた。「It's
Allright」や「夜のスウィンガー」といったナンバーで聞き手
を若くて無防備な日々に連れ戻すかと思えば、何気ない毎日
の暮らしを慈しむような「希望」や「レイナ」によって、辿
り着いた現在を示していく。いわば過去と現在が一瞬のうち
に一晩のステージで寄り沿い、ともに微笑みあったという感
じだろうか。通常のロック・コンボには珍しい楽器のチェロ
が静謐に響き、温かいトーンのオルガンとともに佐野元春の
経験に満ちた歌をそっと包む。そうした意味では最新作『Z
OOEY』からの「君と往く道」はとくに秀逸だったと思う。
言葉はシンプルに選び抜かれている。ぼんやりと聞いている
ぶんには一見何ともないようなワードの連なりだ。しかし、
言葉は簡素であればあるほど、冬の寒さに耐えながら新しい
季節や時代へと羽根を伸ばしていく。シンプルな故に聞き手
それぞれに想像の余地を与え、真っ白なキャンバスにどんな
絵を描いていってもいいんだよ、と優しく諭していく。ベー
スとドラムスがそんな気持ちを後押ししていく。多弁であっ
たり説明的だったりする必要はない。無口だけど本当はすご
くナイーブな奴。あなたのハイスクール時代にそんな友だち
はいなかっただろうか?
「暗い情感で人々と繋がるのはぼくは嫌なんです。でもその
一方で、ハピネス、幸福、ジョイ、そうした肯定的な様々な
ものは本当にいろいろな形をしていると思っています」佐野
は以前そんな風に語ってくれたけれど、そうした心映えが風
に舞い、雨に耐え、光の束となって降り注いできた夜だった。
by obinborn | 2014-06-28 22:45 | rock'n roll | Comments(2)
元春は、そのバンドの包容力に安心して身を任せていたのではないかと思います。
とてものびのびとした印象でした。
2年前、初めてのビルボードの時に比べると、元春たちもオーディエンスも、リラックスし、お互いの息が合ってきたように感じました。
そんな中、鼻の下をきゅきゅっとこするしぐさが、とてもいとおしく、女性ファンの心を鷲掴みにしたというシーンもあったことをお伝えしておきます(笑)
いました。鼻の下きゅうきゅう(笑)そうかあ〜女の人はそういうところまで観られているんですね^ー^