佐野元春&ザ・コヨーテ・バンド
千秋楽の時だった。手練手管のザ・ホーボー・キング・バンドに
よる演奏が続くなか、突然呼び出されたコヨーテ・バンドの三人
のプレイは随分ぎこちないものだったと記憶する。あれから8年。
彼らはメンバーを補強しながら2枚のアルバムを佐野元春ととも
に作り、全国をツアーして回った。東京近郊に限ってではあるが
多くのステージを見てきたぼくには、コヨーテ・バンドの成長が
嬉しかった。最初は稚拙だった音が、次第に固まり、やがて大き
なウネリとなって押し寄せる。一人の聞き手としてその過程に立
ち会ってきた喜びは大きい。ときに通常のホールではなくライブ
ハウスのサーキットまで展開したのだから、佐野元春の「初心に
戻る」決意は本物だった。コヨーテ・バンドのスキルと可能性を
信じ、ともに音をクリエイトしていく。いわば「いつもバンドと
ともに〜always with a band〜」という佐野元春の一貫した音楽
観が伝わってきた。普通ベテランともなればとかく安定路線に身
を委ねがちだが、この男は”すべてをゼロに戻して”再び21世紀と
う荒れ地に舞い降りたのだ。こと世界規模で見渡してもこんなロ
ック・アーティストは珍しい。ゴリゴリとした粗めのギター・ロ
ックと思慮深い詩人。以前ぼくはそのような表題でアルバム『ZO
OEY』のテキストを書かせて頂いたが、コヨーテ・バンドを携え
た佐野元春の新作と秋から始まる全国ツアーが今から待ち遠しい。
by obinborn | 2014-07-18 13:40 | rock'n roll | Comments(0)