パイレーツ・カヌーと東京ローカル・ホンクの素晴しい夜
らパイレーツ・カヌーが再び東京に来てくれた。嬉しい!
しかも対バンは以前から親交があり、抜群の相性を見せてき
た東京ローカル・ホンクの面々だ。そんな素敵なツーマン・
ライヴを20日は高円寺のJIROKICHIにて。あいにく豪雨にた
たれてしまった筆者だが、居ても立ってもいられず会場に向
かった。京都からのカヌーと東京は城南地区出身のホンクの
東京都での共演は四度めとなるが、今晩ほど両者の存在を誇
らしく思ったことはない。ブルーグラスやカントリーといっ
た音楽の語彙を活かしながらオリジナルな表現に取り組むカ
ヌー。一方のホンクは磨き抜かれた言葉と研ぎ澄まされたサ
ウンドで現在インディーズ・シーンの最高峰に位置するカル
テットである。そんな両者の絶好調ぶりに超満員の聴衆が応
え、どこまでも熱い声援を送っていった。
カヌーにしてもホンクにしても何ら普段のぼくたちと変わら
ない姿を見せる。カヌーは多くを英語詞で歌いホンクは綺麗
に連なる日本語の響きを大事にしているのだが、どちらの世
界もぼくたちの暮らしの真ん中にあるような親近感があって、
そこに惹き付けられる。弦楽器のアンサンブルに特化したカ
ヌー。フォーピース・バンド理想のウネリを力強く辛抱強く
培っていくホンク。カヌーは新曲Gull Flying Northでまるで
新たな船出を果たそうとしているよう。どこかアイリッシュ
音楽にも通じる哀感と「なんとかなるよ!」という気持ちを
言い含めた”ラララ〜”の男女混声のコーラスはこの夜間違い
なくハイライトだった。吉岡孝による音色ひとつひとつまで
に気を配ったドラムス&パーカッションがそんな気持ちをど
こまでも後押ししていく。そこに立っているだけといった印
象の谷口潤のベースが、実はフレーズの尻尾ごと、くっきり
とした表情豊かな輪郭を描いていることに気が付く。
対するホンクはどうだろう。木下弦二というソングライター
は以前から普通の言葉で多くを伝えることが出来る優れたポ
エットだった。そんな彼に抱くぼくの興味といえば、東日本
大震災以降に弦二の歌世界なり心映えがどう変化していくか
にあったのだが、3・11後の彼は以前にも増して慎重に言葉
を選びつつ旋律と合体させているようだ。その最新の成果が
まるで最高の時のジョン・レノンのようなGod Has No Nam
eであり、「遅刻します」で示されるぶきっちょな生の肯定
であれば、もう筆者は何も言うことはない。
カヌーのメンバーと合体して最後に演奏されたホンク・ナン
バー「おいのりのうた」の清々しさ。それを今ぼくはキーボ
ードを打ちながら思い出している。弦二とともに”長持ちする
歌”のことを語り合った夜を思い起こしている。
by obinborn | 2014-07-21 01:16 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)