イアン・ゴム『SUMMER HOLIDAY』

今回パブ・ロックの本を執筆する際に課題としたのは、
一日5枚のディスク・ガイドを書くことだった。5枚を
40日間続ければ計200枚になる。およそそんな日程を
組んでいったのである。むろん本文やコラムは別に書か
なければならなかったので、ちょうど半年の時間を要し
てしまったけれど、それはそれで楽しい日々であった。
というのも一枚一枚じっくりと聞き直してみると、買っ
た当時は気が付かなかったことに感心したり、旧作にも
関わらず新鮮さを感じたりと、繰り返し聞くことの大切
さを改めて痛感させられたから。

イアン・ゴムの『SUMMER HOLIDAY』もまさにそんな
一枚だった。ブリンズリー・シュウォーツが76年に解散
してからのゴムはしばらく動向が掴めなかったのだが、
そんな彼が78年にアルビオン・レーベルからリリースし
たのがこの初めてのソロ・アルバムだった。同じ釜の飯
を喰ったニック・ロウもブリンズリーズ解散後は試行錯
誤している最中だったから、筆者も果たして『JESUS O
F COOL』(クールの神様!)とこの『SUMMER HOLY
DAY』のどちらを先に聞いたのかは、もう覚えていない。

それにしても甘酸っぱい郷愁に誘ってくれる作品だ。ブ
リンズリーズ時代に発表したHocked On Loveの再録ヴァ
ージョンに始まり、Sad Affair、Black And Whiteへと連
なっていく。そのいずれもがパワー・ポップというか、
ギターを弾くソングライターがシンプルにデザインして
いった新しい時代のロックンロールだった。シングル・
カットされたHold Onの哀愁溢れる旋律も良かったけれ
ど、それ以上にAirplaneや24 Hour Serviceといった楽曲
には、伸び伸びとしたメロディを書くゴムの姿が自信と
ともに漲っていて嬉しくなったものだ。ちょっと間違え
てしまえば下世話にもなりかねないのだが、気取りとか
洗練された語彙を前面に押し出すのではなく、沸き立つ
音符やリリックをまるで青年のように書き留めていくゴ
ムに、ぼくは彼の人柄を思ったものだ。このアルバムで
言えばThat's The Way I Rock N Rollがハイライトだろう
か。自らのロック体験を心のままにスケッチしたかのよ
うな自伝的なナンバーに胸を打たれる。

アルバム・ジャケットを見開くと、ゴムが彼の妻や子供
たち、あるいはハービー・フラワーズを含むバンド・メ
ンバーたちと遊園地やプールに佇む幾多の写真が飛び込
んでくる。時期的に言っても77〜78年頃のものなのだろ
うが、これらの写真には時代を超えた微笑ましさや普遍
(良きこと)があるような気がする。そんな思いをアル
バム・タイトルとなったSUMMER HOLIDAYという言葉
が後押ししていくのだからたまらない。そして実際飛び
出してくる音楽は、今聞いてもまったく古びないどころ
か新鮮な息吹きを感じさせる。まるで遥か遠い昔、一日
の泳ぎを終えて夕暮れのなかにまどろんでいるような感
じだ。程よい疲れと飲料水やアイスクリーム。きっと誰
もが今も心に秘めているだろう夏の光景である。そんな
切なく甘い気持ちまで、イアン・ゴムの『SUMMER HO
LIDAY』はそっと運び込んでくるのだった。

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by obinborn | 2014-07-27 18:40 | rock'n roll | Comments(2)  

Commented by 安藤 at 2014-07-30 20:00 x
軽快なナンバーの数々が良いですね。イントロからは想像つかない、ビートルズのカバーYou can't do that も面白いですね。そーか、このジャケットって、写真のアルバムのイメージなんですね!奥さんの笑顔がすべてを語っているようです。持ってて良かった。
Commented by obinborn at 2014-07-31 05:34
いい”アルバム”ですよね〜。見開きジャケットの内側や裏側も、勿論
中味の音楽もすべてトータルに響いてくるような気がしてなりません。ダウンロード世代にはこの良さが解らないのかね(苦笑)

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