久し振りにスーマーの歌を、阿佐ヶ谷にて。
ライヴを。一年の内かなりの日数を生演奏に費やし、往
く先々で長い歳月に亘り自分の歌を温めてきた彼だが、
意外なことにオフィシャルCDリリースは今回が初めて。
その記念すべき『MINSTREL』を携えながら、スーマー
は気負うことなくいつもの調子で「古いフレイトトレイ
ン」を歌い始めた。4弦バンジョーの枯れた響きや、実
直そうで何一つ飾ることのない歌声が、ひたひたと染み
渡りながらこちらの疲弊した心をほぐしていく。
その場の気分でどんどん曲を入れ替えていくという普
段のステージと少し違い、この日は二部構成のなかで全
体をすくっと見渡すかのような起伏に富んだ流れが素晴
しい。バンジョーやギターの弾き語りに始まり、やがて
ギターとブーズキの桜井芳樹が招かれ、ベースの千ケ崎
学が加わりつつ視界を広げ、じわりじわりと音を立体的
に膨らませていく。浮き立つビートでスリリングに展開
した「New Moon」は、三人のプレイヤーとしての実力
を物語る最高の場面だったかも。
今日もまた陽は昇り陽は沈む。始発電車が滑りだし、
最終列車が今晩最後の乗客を降ろす。その営み自体は遥
か昔からずっと続いてきた。みんなが起き出す朝に微笑
み、夜ともなれば別れを告げる。しかしスーマーという
人は、まだ始発電車の来ない駅の寂しさをきっと誰より
も知っているのだろう。最終列車が去った後の寄る辺な
さをきっと誰よりも敏感に噛み締めているのだろう。そ
んな彼の目に映るものがやがて発酵し歌となっていく。
たとえ真夏でも真冬でも、いい時でも悪い時でも、スー
マーは昨日までと同じように歌っていくことだろう。
by obinborn | 2014-08-06 06:16 | one day i walk | Comments(0)