夏の終わりに東京ローカル・ホンクを

その歌はとくにあからさまなメッセージを発するわけでもなけ
れば、特定の誰かを責め立てるわけでもない。それどころか、
もっと穏やかな日常のスケッチといったところだ。言葉が平易
であるぶんイメージ豊かに幾多にも広がっていく余地があり、
聞き手たちはそこに故郷のような温かみを覚える。そんな東京
ローカル・ホンクの8月最後のライブを26日の横浜サムズアッ
プで。ここのところツーマンが続いていたホンクが、彼らの重
要なベースであるサムズでワンマンを行うのは久し振りのよう
な気がする。明晰な発声で歌われる歌や、弾力のある精緻な演
奏は5〜6年前とちっとも変わらない。それでも何人かのファ
ンが入れ替わり、新しい曲が増え、その分登場する機会が減っ
た演目もあるといった具合だ。多かれ少なかれ、歳月とはそう
いうものだが、木下弦二のほっこりした歌を聞いていると、そ
んな些細なことはもうどうでも良くなる。能天気なのではない
。むしろ、弦二も他のメンバーも敏感過ぎるほど社会の変化を
感じ取っていることは各自のFBなどでも理解出来る。ただ、そ
のシリアスさをソングライティングに持ち込むことに弦二は以
前にも増して慎重になっていると思う。きっと彼は解っている
のだ。直接的なプロテストソングの限界を。他人に放った矢が
自分に返ってくることを。英雄的な態度の危うさを弦二はたぶ
ん音楽家としての直感で理解出来ているはず。新しめのナンバ
ーで辛辣な歌を探すとしたら、ジョン・レノンばりに赤裸々な
「身も蓋もない」になるのだろうが、その歌でさえ反抗的な態
度以前に彼らしい自問がある。正確な引用ではないが歌詞には
こんなフレーズがあった。「ブルーズなんて習い事さ。ロック
ンロールなんて借り物さ」まさにそんな地点から弦二は自分の
歌作りへと向かっていったのである。とくにこの夜印象的だっ
たのはブルース・スプリングスティーンを引き合いに出した場
面。弦二曰く「スプリングスティーンにとってストリートがリ
アルなのと同じように、ぼくにとっては戸越銀座の商店街がと
ても大事なんです」といった旨である。そんなMCに導かれな
がらノンマイクとアカペラで歌われた「サンダル鳴らしの名人」
が、染み入るように夏の終わりを慈しんでいった。

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by obinborn | 2014-08-27 01:13 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

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