10月19日の東京ローカル・ホンク

木下弦二が歌詞ノートと睨めっこをしている。店のビザール・ギタ
ーをいじっている井上文貴を弦二が「どのギターでも同じフレーズ
だな!」とからかっている。せっかく新調したドラム・キットにも
かかわらず苛立ちを隠せないのが田中クニオだ。何でもバスドラの
キックが不安定らしく、彼はボルトを何度も締め直している。店に
横付けされたままだったハイエースを駐車場に移動させた新井健太
は、戻るやいなや田中の側に寄り添う。そして彼ら4人はやがて車
座になりながら、隠れた名曲「伊豆半島」のコーラスを歌い始める。
生音のみの、気持ちがどきりと澄まされる瞬間だ。

そんなリハーサルの断片を拾い上げていくと、ロック・バンドとい
うのは本当に愛おしい集合体だなと思う。誰一人欠けても音楽は成
り立たないし、その日のふとした心持ちによって演奏は良い方にも
悪い方にも転がっていく。まして東京ローカル・ホンクの場合、補
正されたプログラミング・サウンドではなく、あくまでも、どこま
でも、人間臭いバンドであるからなおさらだ。そんなホンクメンを
観ていると、ぼくはミック・ジャガーの言葉を思い起こさずにはい
られない。「ローリング・ストーンズは家族のようなものさ」

ファミリー的な一体感が溢れ出すのは、今日(19日)の会場であ
るパラダイス本舗に集まったお客さんたちの功績でもあるだろう。
歌われる歌詞のひとつひとつを聞き手たちが愛おしそうに反芻し
ていく。思いっきりの笑顔とともにホンクへと投げ返していく。
そんな場面場面はむろん他の会場でも活かされているのだが、ホ
ンクメンが多くを担った夕焼け楽団のお店での演奏だけに、親し
みの感情はステージ後半になればなるほど密度を増していった。
アンコールではお店のマスターでもある藤田洋介が呼ばれ、温か
さが溢れ出す彼ならではのトーンとリックでテレキャスターを繰
り出していく。そこで歌われた「星くず」と「バイ・バイ・ベイ
ビー」のことを、ぼくは生涯けっして忘れることはないだろう。

三人の優れたギタリストが互いに極上のソロを繰り出していく。
後方のリズム・コンビがそれをがっつりと受け止めていく。

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by obinborn | 2014-10-20 02:11 | 東京ローカル・ホンク | Comments(2)  

Commented by イチノセ at 2014-10-20 11:04 x
小尾さん、昨晩は中央林間でお会いすることができ、たいへんうれしかったです。Liveもすばらしかった、幸福感に満ちていました。好い年の大人たちがあれだけ浮かれ上がれるというのは、もちろんあのvenueの持つ親密感が影響しているとも思いますけど、やはり東京ローカルホンクの楽曲と演奏が、その場に居合わせた好い年した大人たちの心と、そして身体を揺さぶるからです。
それは昨晩弦二さんのMCにあった「歩いて帰宅したときに曲想が生まれた曲云々」との言葉を聞いて合点が行きました。東京ローカルホンクの楽曲は人の身体感覚にも生々しく訴えかけていたということだったのですね。
Commented by obinborn at 2014-10-20 14:21
こちらこそ久し振りにお会い出来て嬉しかったです。また今度ゆっくり飲みましょう!

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