10月22日の木下弦二

22日は下北沢のleteにて木下弦二のソロ・ライブを。東京ローカル
・ホンクが繰り出す曲のラフ・スケッチが聞けるばかりか、ソロで
あるが故に歌の輪郭が浮かび上がってくる瞬間もあって、約2時間
半たっぷり弦二のソングライティングの妙に触れることが出来た。
またソロならではの楽しみであるカバー曲も、忌野清志郎の「よそ
者」と「わざとFeel So Bad」ポリスの「メッセージ・イン・ザ・
ボトル」スティーヴィー・ワンダーの「サンシャイン・オブ・マイ
・ライフ」J.ガイルズ・バンドの「アイム・フォーリン」などなど
が飛び出し、会場はしばしリヴィングルームのような親しみの感情
に満たされた。

何も今夜初めて弦二のソロに接したわけではないのに、彼のライブ
の帰り道はいつも幸せに包まれる。それはきっと彼が自分の普段
の暮らしから寸分違わない場所で歌詞を思い浮かべ曲を書き留めて
いるからだと思う。等身大と言ってしまえばあまりに手垢に塗れた
形容かもしれないが、この人の書く歌詞に嘘はないと信じられる、
何ともぶきっちょな息遣いが伝わってくる。福岡での彼の生活から
一コマを切り取ったような「夏みかん」や「遅刻します」がそうだ
し、ジョン・レノンの「ゴッド」に匹敵する真摯な「身も蓋もない」
では、こんなシリアスなフレーズも飛び込んでくる”ブルーズなんて
真似事さ、ロックンロールなんて習い事さ”

とても不思議なことだが、木下弦二という男に他の職業を思い浮か
べることがぼくはまったく出来ない。教師をしながら歌う人とか、
弁護士を務めながらギターを奏でる人とか、あるいは漁師が久し振
りに陸に戻ってきて歌い始める(それはそれで素敵だね!)といっ
たイメージが、弦二に限っては本当に不釣り合いなのである。

神様から授けられたであろう才能を、この人は脇道に逸らすことな
く幾多の努力とともに磨き上げてきた。いや、”もうだめだ”と思
った苦難の時期があったのかもしれないが、木下弦二という人はけ
っして毎日昇る空や雲を見上げることを怠ったりはしなかった。彼
の目が追う先々に人々の確かな営みがあり、そっと差し伸ばされた
手の彼方には、思わず愛おしくなるような町並みが連なっていった。
それらがいつしか弦二ならではのソングライティングとして、鮮や
かに結晶していった。

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by obinborn | 2014-10-23 02:04 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

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