1976年4月のヘンリー・マカロック

紹介がやや遅くなってしまったけれども、昨年末の大収穫がヘン
リー・マカロックのロックパラスト音源(と映像)だった。時が
76年の4月というだけで過ぎ去ってしまった歳月に目眩を覚える
ほどだが、マカロックにとって最初のソロ・アルバム『MIND YO
UR OWN BUSINESS』がリリースされた時期だけに意気込みが伺
える素晴しいライブとなっている。ブリテン諸島のフォーク音楽
を奏でたスウイニーズ・メンに始まり、ジョー・コッカーのギタ
リストとして脚光を浴びながらグリース・バンドとして独立した
マカロックは、その後ウィングスに短期間関わりMY LOVEで究極
のソロラインを奏でた。その後に彼が歩んだステップがまさにこ
の76年前後のことだった。

やはり気になるのはバンド・メイトであろう。そういう意味では
グリース・バンドのセカンド・ギタリストであり、英国ソウルの
とても粋なバンドであるココモに参加するニール・ハバードや、
ブリテイッシュ・スワンプ界隈のお助けマンであるミック・ウィ
ヴァーの参加は嬉しい。リズム隊と一本のホーンは寡聞にしてぼ
くは知らない人たちばかりだが、それでも過不足ない演奏であり
何よりマカロックのレイジーなノリに最大限の敬意を払っている
のがいい。曲目はファースト・ソロとグリース・バンド2枚のア
ルバムからのナンバーでほぼ埋め尽くされているものの、伝承曲
のJOHN HENRYを採用しているのが新味であろうか。既発表で言
えば多くの曲にサックスが登用されていることや、グリース・バ
ンド時代のHONKEY TONK ANGELがぐっとテンポを落としてプ
レイされたことも嬉しい。異なる2ヴァージョンを聞き比べられ
るMIND YOUR OWN BUSINESSや、アクースティック・ギター
をマカロックが珍しくも奏でるLET IT BE GONEは予想外のプレ
ゼントだった。とくにLET IT〜でハバードが丁寧にオブリガード
を織り成していく様には、思わず胸が一杯になってしまった。

いつだったか私は自己紹介文のようなものを書かされ、その時に
「マカロックのような遅弾きのギタリストがとくに好きです」と
記したことがある。むろん今でもその気持ちにいささかの曇りは
ない。刷り込みというのは恐ろしい(笑)私が高校時代に一番好
きだったギター弾きがデイヴ・メイソンであったと言えば解って
頂けるだろうか? むろんそこにはかつての弾き過ぎを反省しな
がら自らの音楽を求めていったエリック・クラプトンの足跡が重
なっていく。蛇足ではあるがそんなE.CがJ.J.ケイルを世に広めた
意味も少なくないだろう。そんなロック地図のなかにこのマカロ
ックを置いてみると、彼が本当にやりたかった音楽がおぼろげな
がらも見えてくる。マカロックという一般的にはけっして著名で
はない音楽家の自画像を、もっと大きな時代のうねりのなかでし
っかり捉えることが出来る。

弾かないギタリストの聖域。音が鳴らない部分に寡黙なニュアン
スを聞き取ることの尊さ。もしくは音数の少ないことに込められ
たプレイヤーたちの心持ち。ヘンリー・マカロック76年4月22日
のライブは、私にそんな感情を運び込んでくるのであった。そう、
旅路に迷った人がホームの灯火を求めるように。

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by obinborn | 2015-02-10 22:34 | one day i walk | Comments(0)  

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