ローラ・ニーロと冬の一番星

昼は近所のハロー・オールドタイマーでケイジャン・チキンとコ
ーヒーを美味しく頂いた。それからのんびりとオハイオ・ノック
スをアルバム一枚丸ごと聞き終え夕暮れになるとウォーキングに
出掛けた。理想的な休日の過ごし方である。それにしてもノック
スのように牧歌的かつ高度な音楽がメジャーのレコード会社(リ
プリーズ)から堂々とリリースされていたなんて、70年代前半の
音楽産業は幸せだったと思わずにはいられない。適正な資本によ
る的確なマーケットが、そこではきっと守られていたのだろう。
今のぼくが日本のインディー系レーベルに所属している音楽家の
ライブに足を運んでいるのも、心のどこかでそんな匂いを本能的
に嗅ぎ付けているからかもしれない。

久し振りにローラ・ニーロの『GONNA TAKE A MIRACLE』(コ
ロンビア 71年)を聞いている。ローラが少女時代にブロンクスの
町並みで親しんできたドゥワップやR&Bに敬意を表したカバー・
アルバムだが、それもマーサ&ザ・ヴァンデラズ、スモーキー・
ロビンソン&ザ・ミラクルズ、ジ・オリジナルズといったモータウ
ン・サウンドを範にしているところが東海岸出身のローラらしい。
こうした音楽を当時24歳だった彼女が精一杯恩返ししているとい
った感じだ。それらをギャンブル&ハフによる制作のもと、フィラ
デルフィアのシグマ・サウンド・スタジオで録音し、コーラスにラ
ヴェルの3人が加わった。ソウル・アルバムにもかかわらず全体に
リズム隊が控えめなのは、ローラがラヴェルたちとの和声を最大限
に生かしたかったからだろう。

それにしてもカバー・アルバムとは難しいものだと思う。耳の肥え
たリスナーたちはオリジナル・ソングの素晴しさと比べてしまうだ
ろうから。それでもスタジオ・レコーディングの場合でも、ライブ
の一期一会でも、筆者は幾つかのかけがえのない体験をしてきた。
とくにライブの場では会場の空気がすくっと立ち上がり、みんなの
気持ちが明るくなるのがいい。それこそは古い曲が今の時代に歌わ
れる意味だと思いたい。明日という日が永遠にやってこないような
巡業に明け暮れていたロニー・ホーキンズ&ザ・ホークスの時代に
思いを乗せていくザ・バンドの『MOONDOG MATINEE』(キャ
ピトル 73年)が南部的カバーの最高峰としたら、ノーザン・ソウ
ルに多感だった日々を重ねたローラの『GONNA TAKE A MIRACL
E』は、筆者にとって冬の一番星のようなものだ。

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by obinborn | 2015-02-14 19:10 | one day i walk | Comments(0)  

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