フェアポート・コンヴェンション『UNHALFBRICKING』

老夫婦が映し出されたこのジャケット写真を見て彼らが演奏
していると感じた人は今はいないと思うが、69年当時若者の
心情発露とされたロックの担い手がこの写真を選んだのは大
胆な発想の転換だった。前年にはザ・バンドの『ビッグ・ピ
ンク』がリリースされ、その見開きにはまるで家族を凝縮す
るように叔父や叔母たちの写真が収められていたから、フェ
アポートはそれに影響されたのかもしれない。仮にそうでな
くても、ロックの楽器編成で伝承音楽にアプローチすること
に価値を見出していた彼らにとって、こうした形で目上の人
々に敬意を払うのは自然な心の流れだったと想像する。

69年が明けてから間もなくロンドンのサウンド・テクニクス・
スタジオで本作のレコーディングは始まった。プロデューサ
ーは前2作と同じくアメリカ人のジョー・ボイドが担当して
いるものの、フェアポートのメンバーも名を連ねていること
から、バンド側に自信が生まれ発言力が増した様子が伺える。
やがて正式メンバーとなるデイヴ・スウォブリックのフィド
ルとリチャード・トンプソンのエレキ・ギターがせめぎ合う
長大なA SAILOR'S LIFEの演奏で、フェアポートは一躍評価
を高めた。またトンプソンが作ったGENESIS HALLが生まれ
たての古典のように響くかと思えば、サンディ・デニーは生
涯の名曲WHO KNOWS WHERE THE TIME GOES(時の流れ
を誰が知る)を持ち込むなど、ありとあらゆる点でバンドは
ピークを迎えようとしていた。SI TU DOIS PARTIR、PERCY
'S SONG、MILLION DOLLAR BASHとボブ・ディランの作品
を3曲も取り入れたことは、『ベースメント・テープス』から
の影響を仄めかしている。以降サンダークラップ・ニューマン
やマクギネス・フリントなど『ベースメント〜』から選曲する
英国のグループの先鞭を付けた形だ。

レコーディングの合間にはマーチン・ランブルの悲劇的な死
があり、7月にアルバムがリリースされSI TU DOIS PARTIR
がシングル・チャートを駆け巡ってもメンバーの心は晴れなか
った。バンドはもはや解散状態だった。このアルバムにも一曲
参加しているトレバー・ルーカスはメンバーとともにグループ
の再編成について話し合ったという。その結果スウォブリック
のフィドルとデイヴ・マタックスのドラムスを新たに迎え、フ
ェアポートは活動を再開。8月の終わりから4作めのアルバム
『LIEGE AND LEAF』の録音に取り組んでいく。

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by obinborn | 2015-02-26 16:29 | rock'n roll | Comments(0)  

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