キャロル・キング『タペストリー』

ジャケットに映る主人公の女性はジーンズにセーターと
いう飾らない姿で窓辺に腰掛けている。さらに彼女は裸
足なのだった。ジム・マクラリーが撮影したその写真と
同じように、キャロル・キングはこのアルバムで自然な
歌を歌い、鍵盤楽器を弾いている。プロデュースを担当
したルー・アドラーはこう回想している「キャロルがす
ぐ近くで歌い、ピアノを弾いているような録音を心掛け
たんだよ」

1971年にリリースされて以来この『タペストリー』は
302週間チャートインされるという偉業を成し遂げた。
つまりそれほど人々の心を捉えたのだった。シンプルな
演奏といってもピアノの弾き語りではない。実際ここに
収録された曲で彼女がオルガンと向き合っているだけの
曲はアルバム表題になったTAPESTRYのみであり、その
ほかのナンバーはチャールズ・ラーキーのベースとジョ
エル・オブライエンのドラムスを中心にしたスモール・
コンボの演奏で彩られ、ギターのダニー・クーチらとと
もに彼らは既にジョー・ママというグループで一枚めの
アルバムをリリースしていたから、ジョー・ママをバッ
クにキャロル・キングが歌った作品なのかもしれない。
例えばSO FAR AWAYで丁寧に裏メロを拾い上げていく
ラーキーのエレクトリック・ベース。例えばIT'S TOO
LATEに聞き出せるクーチの簡潔なギター・ソロ。それ
らの出しゃばらない演奏がこのアルバムに膨らみをもた
らしている。

本作はまたキャロル・キングの成長物語と言えるかもし
れない。ゴフィン=キングのソングライター・コンビで
50〜60年代に多くのポップ・ヒット曲を作ってきた彼ら
だが、作詞を担当していたジェリー・ゴフィンはある日
ボブ・ディランの抽象詞に感銘を受け自分たちのレコー
ドを叩き割ったと伝えられている。一方のキングはどう
だろう。彼女はかつてガール・グループのシレルズに提
供したWILL YOU LOVE ME TOMORROW?をここで再
び取り上げた。無邪気で他愛ないティーンエイジ・ソン
グだったこの曲だが、ここでキングはテンポを落としな
がらじっくりと歌っている。「今夜あなたは私を愛して
くれたけど、それは明日も続くの?」というリフレイン
に祈りの感情が込められ、けっして流麗とはいえない彼
女のヴォーカルはかえって歌に真実味を与え、ジェイム
ズ・テイラーのコーラスがそれを後押ししていく。

今でもたまに街角のBGMで『タペストリー』の楽曲が
聞こえてくると、ふと足を止めてしまう。それは自分
が自分らしくあり続けるための処方箋であり、最後の
砦のようなものだろう。

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by obinborn | 2015-03-15 09:12 | one day i walk | Comments(0)  

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