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CRUEL TO BE KIND

思えば私くし如きがまるごと一冊パブロックの書籍を出して
しまったのが、およそ一年前のこととはいえ奇跡のように感
じます。発案者は古くから付き合いのある芽瑠璃堂の長野和
夫さん。彼が「オレはオビちゃんの文章をまた読みたいんだ
よ〜!」と言ってくださったのがそもそものきっかけでした。
そこからシンコーミュージックさんを紹介され、プレゼンが
通り、原稿に没頭していったのがちょうど昨年の今頃でした。

そんな裏事情はともかく、またまた私は「パブロックってど
んなジャンルなんですか?」と問われることになってしまっ
たのです。人々がある程度解り易い尺度に頼りたい気持は私
にも何となく解るのですが、パブロックって特定の音楽スタ
イルやジャンルというよりは、むしろロック音楽を街角へと
取り戻し、狭い会場のバプを拠点に至近距離でライヴを楽し
もうとするムーブメントだったのです。音楽的にはカントリ
ーが好きな者もいれば、ブルーズ〜R&Bに特化した連中もい
るといった具合に何とも雑食的ですが、それこそはパブロッ
クの生命線でもあります。多少とも理屈を付けるとすれば、
黒白問わずそこには広くルーツ音楽を愛する心があったとし
か言いようがありません(ルックス的には地味ですね〜笑)

思えばパブという場で、ビールを呑みながら堪能するバンド
ほど楽しいものはありません。現在はスタジアムで双眼鏡を
通して眺めざるを得ないストーンズも、元々はマーキー・ク
ラブに出演するR&Bバンドのひとつに過ぎませんでした。そ
んな”原点”をもう一度しっかり見届けてみよう。まさにそれこ
そが70年代の前半にロンドンを席巻したパブロックの運動だ
ったのです。その想いのようなものは結果的にパンク・ロッ
クの狼煙を上げることに成功しました。クラッシュのジョー
・ストラマーも元々はパブロック周辺にたむろする売れない
音楽家の一人に過ぎませんでした。情熱と理想だけはある。
それでも手足がそこに届かない。そんな苦々しさを含めて、
私は今もパブロックのムーブメントに惹かれます。フィルモ
ア公演が大失敗に終わり、苦渋を舐めたニック・ロウもまた
その一人。『労働者の欲望」と命名された彼の79年のセカン
ド・アルバム。そこに込められた音楽への忠誠心。ユーモア
と自虐。それらが今なお私を激しく捉えます。CRUEL TO
BE KIND (恋する二人)にはこんなリリックがあります。「
いじわるも恋のうちなのさ」

CRUEL TO BE KIND_e0199046_18203059.jpg

by obinborn | 2015-04-02 18:20 | rock'n roll | Comments(0)  

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