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5月10日の東京ローカル・ホンク

アカペラ・コーラスが冴え渡る「サンダル鳴らしの名人」
からツアーで全国各地を巡るロード・ソング「車のうた」
まで、10日は高円寺のJIROKICHIで東京ローカル・ホン
クのワンマン・ライブを心ゆくまで堪能した。戸越銀座
の商店街をスケッチした歌に始まり、バンドマン永遠の
ツアーを楽天的にロックした最終曲まで、その3時間近
くに及ぶ演奏に思いっきり気持を持っていかれていく。
普段着だけの言葉たちがよく弾むフォーピースのバンド
によって輝き始める。そんな時間がなだらかな丘陵のよ
うにどこまでも続いていった。何しろ初めてホンクに接
した友人(筋金入りの音響マン)が驚愕するほど特別な
夜だった。

洋楽のコピーから始まった日本のロック。その過程には
様々な悩みや葛藤があったと思う。ホンクのソングライ
ターである木下弦二の言葉はとても明晰だ。「スウィン
ギング・ロンドンとか言われてもぼくにはさっぱり解り
ません。ロンドンがスウィングしていたかどうかを実感
できない。そんな物真似をした人たちもいましたけど、
ぼくは何故自分の住んでいた(戸越銀座の)町の光景を
歌に出来ないのだろう? そんな悔しさをずっと抱えて
きました」ロンドンであれ、サンフランシスコであれ、
借りものの言葉と音楽はときに自身を傷付ける。

弦二のそんな歌詞ひとつひとつを、帰り道で反芻してい
る。終盤に歌われた「おいのりのうた」の コール&レス
ポンスの愛おしさ。「夏みかん」や「おいでおいで」か
ら聞こえてくる小さな生命の大きな鼓動。そうした気付
きのひとつひとつから、決してヒロイックではない隣人
たちの歌が、柔らかな輪郭とともにしっかりと聞こえて
きた。

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by obinborn | 2015-05-11 02:07 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

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