Teenage Fanclub/Songs From Northern Britain

こうしてTFCのアルバムを時代順に聞き直してみると、
グランジ・ロックの時代と共振していたのは93年の『
THIRTEEN』位までで、パワー・ポップとしては最高峰
とも呼ばれる95年の名作『GRANDPRIX』を一つの頂点
として、その後は次第に尖った部分が少なくなっていく
のを感じます。むろんライブの場ではノーマンとレイモ
ンドのギターを中心に厚い音の壁を作っていることに何
ら変わりはないのですが、ことスタジオ・レコーディン
グに関しては、勢いまかせの部分に代わって落ち着いた
大人の味わいが次第に増してきました。

そんな彼らのターニング・ポイントとなったのが97年の
『SONGS FROM NORTHERN BRITAIN』でした。彼ら
の地元であるグラスゴーの風景を映したであろうジャケ
ットからも穏やかな心持ちが伝わってきて、あの『BAN
DWAGONESQUE』のギラギラした原色とは、どこまで
も対照的です。音楽もぐっとルーツ色が強くなり、とく
に本作では彼らにとってインスピレーションの源泉とな
ったザ・バーズを彷彿させるジャングリーなギター・サ
ウンドとハーモニーが際立っています。80年代以降のザ
・バーズ・フォロワーとしては、アメリカのロング・ラ
イダーズや英国のロッキンバーズが一部に熱烈なファン
を生み出しましたが、ここでのTFCもまさにザ・バーズ
の子供達といった匂いを振りまいていて、個人的にもT
FCのアルバムでは一番愛着があります。また全英チャ
ートで第三位に輝くなど、彼らの作品中最も売れたのは
意外にもこの”地味な”アルバムでした。

前作『GRANDPRIX』で完全に確立したノーマン、レイ
モンド、ジェラードの三人がそれぞれ曲を持ち寄るとい
うスタイルが本作でも引き継がれ、このアルバムではS
TART AGAIN、AIN'T THAT ENOUGH、I DON'T WANT
CONTROL OF YOUなど、彼らのソングライティングの
上手さがひたひたと胸を満たしていきます。何の予備知
識もなく音だけを聞いたら、アメリカのフォーク・ロッ
ク・バンドかと思ってしまう人もいるでしょう。とくに
ノーマンが書き上げたWINTERはまさに珠玉の名曲であ
り、途中で絞り出すトレモロ・ギターも大きなポイント
になっています。

2000年に発表された次作『HOWDY!』はすべて燃焼し
尽くした後の寂しさを感じるようなアルバムでした。
事実TFCとともに歩んだクリエイション・レーベルは
99年に閉鎖され、ひとつの時代に幕を下ろしたのです。
この時点でTFCが解散したとしても不思議ではなかった
のですが、ポエトリー・リーディング・アーティストと
のコラボレーションなどを経たのち、05年にティーンエ
イジ・ファンクラブは見事に復活します。その話はまた
いつか。

かつてオアシスはTFCに対し「きみたちは世界で二番目
にイカしたバンドだね。一番はもちろんオレたちさ!」
と言い放ったそうです。それをノーマン・ブレイクがどう
受け止めたかは知る術もありませんが、TFCのいい部分
は無理に自己主張したり、時代にすり寄ったりしない点
でしょう。逆に言えば音楽を愛し過ぎてしまっているよ
うな部分が彼らにはある。私はきっとそんなところに惹
かれ続けているのかもしれません。


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by obinborn | 2015-06-04 16:21 | one day i walk | Comments(2)  

Commented by Almost Prayed at 2015-06-04 20:59 x
彼らのバンドとしてのひとつの到達点は“Grand Prix”にあると思いますが、それはソングライターとしての3人の成長に加えて、ポール・クィンという人物がドラムを担当するようになったことが非常に大きいですね。ポール・クィンは“Songs From Northern Britain”の後に、自身のバンドで活動するため(そこではギター&ヴォーカルを務めていました)にバンドを離れたので、バンドはフランシス・マクドナルドを呼び戻したわけですが、手数が多くて全体的にバタバタしている彼のドラムだと、曲の味わいや音の深みを追求するような“Grand Prix”とかのような路線には合わないな、というのが正直なところです。

で、この“Songs From Northern Britain”ですが、半分ぐらいは自身の手癖で作ってしまったような曲ですけど、もう半分はバンド史上最高と言ってもいい、実に味わい深い曲が並んでいますね。“I Don't Want Control Of You”や“Your Love Is The Place Where I Come From”といった曲はこのバンドが残した素晴らしい財産ですね。

ここ15年ほどの彼らは、バンド自体の音がだんだんとゆるーくなってきて、それはしょうがないところかなとも思いますが、バンドの音を全体的にキリッと引き締めてくれるようなプロデューサーと組めば、もうひと花もふた花も咲かせられると思いますけどね。とても思い入れのあるバンドなだけに、何だか余計にそう感じます。
Commented by obinborn at 2015-06-05 14:54
コメントありがとうございます。確かに全体的にゆっくりとした演奏になってきていますね。無理に若ぶるのでない、最近のこうした方向性を私は歓迎していますが、もう一花咲かせるとしたら、思い切って刺激的なプロデューサー
と組んでみるのもいいかな、とも思います。

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