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ニール・ヤング&クレイジー・ホース

90年という区切りある時期にニール・ヤング&クレイジー・
ホースが『RAGGED GLORY』をリリースした際、あるメデ
ィアが的確にこう評していた「フィードバックが戻ってきた
ぜ!」実際このアルバムとそれに続くWELD TOURによって
ヤングはグランジ世代から熱狂的な支持を得たのだった。彼
のツアー史上最大の音量だったとされるそのツアーは無慈悲
なまでのノイズ王国『ARC』(今や激レア・アイテムか)と
いう副産物を生み出しながら、新しい時代(冷戦の終わりと
湾岸戦争の勃発)へと踏み込んでいく。

そうした一振りの発端となった『RAGGED GLORY』の美点
は、ニールが技術的にけっして上手くないクレイジー・ホー
ス(ポンチョ、タルボット、モリーナ)という昔からのバン
ド仲間とともに嬉々としてレコーディングに臨んだ点に尽き
よう。優れた自覚的なロック・アーティストほど、音楽的な
成熟とともに失っていくアマチュアイズムのことを考えてい
るのだが、ニールもまたそのことに思いを馳せていたようだ。
そうでなければニルヴァーナからティーンエイジ・ファンク
ラブまでの新しい”下手くそな”若者たちが、こぞってニール
と彼のバンドに共感を寄せた理由が思い当たらない。

アルバムから飛び込んでくる狂おしいまでのギター・ロック
は、少なくとも私を鼓舞させる。とくに「MANSION ON TH
E HILL」がいい。ニールはまるで自分たちの世代(60年代の
生き残り組)の責任を背負うように、こう歌っている「丘
の上のマンションからは、今もあのサイケデリック・ミュー
ジックが聞こえてくるぜ!」その一方でプレミアーズの無邪
気なロックンロール「FARMER JOHN」をカヴァーしている
点にも感動する。

それから10年後にイラク・ウォーが勃発し、それを丸ごとテ
ーマに掲げた『LIVING WITH WAR』を作るとは、ニール・
ヤング自身思っていなかったかもしれない。

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by obinborn | 2015-06-06 19:49 | rock'n roll | Comments(0)  

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