入院の思い出、そしてヤングブラッズのこと

もう10年ほど前のことになるだろうか。仕事のちょっとした
不注意で左腕を骨折してしまい入院していたことがある。と
言っても簡単な手術のみで、あとは毎日ひたすら横になって
三食を定期的に取り、備え付けのテレビを観たり読書をした
りと、考えようによっては何とも贅沢な日々を私は過ごした。
そんな時に見舞いに来てくれた友人がヤングブラッズのCDを
焼いて持ってきたことは今でもよく覚えている。お陰様で退
屈を紛らわすことが出来たばかりか、心穏やかに昼間をやり
過ごし、夜は夜でぐっすりと眠りに着いた。

10年なんてあっという間だ。あの時は確か三人が見舞いに来
てくれたのだが、もうここしばらく会ってもいない。誰を責
めるとか何かのせいにするとかではなく、歳月とはそういう
ものだと思う。実際個々それぞれの生活や、訪れる環境の変
化があるわけで、大人とは何かを誓い合ったり、永遠の約束
をしたりするものではないことを遅まきながら覚えたものだ。
それでもヤングブラッズをプレゼントしてくれた人が大震災
の時、彼女の実家がすべて流されてしまったことを知った時
は衝撃を受けた。今までテレビの画面や新聞の字面を通して
しか知るしかなかったことを、初めてわりと近い人から電話
越しに聞かされたのだ。多分、あの震災でこうした経験をさ
れた方は少なくないだろう。

ジャケットを挙げた『HIGH ON A RIDGE TOP』はヤングブ
ラッズのラスト・アルバム。元々オリジナル曲だけでなく、
カバーソングも好んで取り上げてきたグループだったが、そ
のどれもがジェシ・コリン・ヤングの歌によって爽やかな風
が吹き、大地から土の温もりが立ち上がってくるようだ。こ
のアルバムではチカーノ・ロッカー、リッチー・バランスの
DONNAとジミー・リードのGOING TO THE RIVER(ファッ
ツ・ドミノの歌とは同名異曲)がとくに好きになった。後者
ではリード特有のハイトーンによるブルーズ・ハープまで似
せている点に思わずニヤニヤしたりね。そしてまるで祈りの
ようなディランのI SHALL BE RELEASEDは、朝靄のなかか
らくっきりと立ち上がってくる樹木のようだ。

自分が悪い境遇に置かれた時に差し伸べられた手は忘れるこ
とがない。だから私はこうして7月の夕暮れ時にヤングブラ
ッズを聞きながら、その人のことを思う。届けられたCDRそ
のものよりは、それを持って見舞いに来てくれた人の心映え
のことを考えている。

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by obinborn | 2015-07-07 17:30 | one day i walk | Comments(0)  

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