ロニー・レインの足跡を辿って

昨年の秋に藤沢のBar Cane'sで出版記念のDJをさせて
頂いた時、大学の同級生に会った。同級生といっても
当時は見ず知らずの間柄だったが、雑談しているうち
に同じ学校に通っていたことが判明した。そうすると
何とも不思議な(現金な?)もので何となく彼に親し
みを覚えてしまった。お互いすっかり歳は喰ったとは
いえ、その夜は近況や音楽噺に花を咲かせたものだ。
彼がどういう文脈で何を言いたいのかまでは汲むこと
が出来なかったものの、「みんな保守的になっちゃっ
たね」という一言は心に突き刺さった。

そんな彼から先日メールを貰ったのだが、それぞれ共
通の友人がいたことが解り嬉しくなってしまった。仮
にその人をS君として話を進めたいのだが、私にとって
S君は当時の音楽仲間の間でも異彩を放ち、時代に流さ
れまいとする頑固さを持ち合わせていた。当時の音楽
シーンはごく大雑把に言えば『ホテル・カリフォルニ
ア』とともに西海岸サウンドが斜陽化し、パンク〜ニュ
ーウェイブの動きが活発になっていった時期と重なる
のだが、そんな変化のなかでS君はいつも悠然として
いた。それほど多くの言葉を発するわけではないのだ
が、好きな音楽を昨日と同じように聞いてりゃいいじ
ゃんとでも言いたげな気持は、彼が黙すれば黙するほ
ど、確かな輪郭とともに伝わってくるようなニュアン
スがあった。

以前、京都のCDショップであるプー横町のアンケート
にも書かせて頂いたが、そんな学生時代にS君が貸して
くれたレコードがロニー・レインのファースト『ANY
MORE FOR ANYMORE』とセカンド『SLIM CHANCE』
であり、私はそれに大きく影響された。元々フェイシズ
の陽気なロックンロールは大好きだったが、バンドを脱
退してソロになったロニーの方向性とはこういうルーラ
ルな音楽地図だったのか、と密かに頷いたものだった。
『ANYMORE〜』のジャケットにはこちらに背を向け
馬車に乗って町並みから去っていく男たちが映し出され
ている。その含みこそロニーの実践するオールドタイミ
ーな音楽としっかり足並みを揃えていたように思える。

今こうしてロニー・レインの音楽を聞き直していると、
あの気ままな学生時代から随分長い歳月が経ってしまっ
たことが判る。私自身に関しては昔と変わらない部分も
あるだろうし、変貌していったところもあるだろう。そ
こは預かり知れぬ問題であり、いちいち気にしては前に
進めまい。ただいつも感じるのは、どんな時代に身を置
くのであっても世間の趨勢に流されたくないということ
だけだ。もう少しだけ強い言葉で言えば、どこかの誰か
が持ってきた借り物の言葉や思想には与しない。そんな
思いだろうか。

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by obinborn | 2015-08-10 12:09 | one day i walk | Comments(0)  

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