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フィル・アルヴィンのポスト・ロック

ポスト・ロックとは何ぞや?と考えた場合、フィル・アル
ヴィンの86年作『UNSUNG STORIES』は幾つかのヒント
になるかもしれない。という前口上(減らず口ともいう)
はともかく、実際の音楽はジャンプR&Bの王様ジョー・タ
ーナーに捧げられたもので、アルヴィンたちに加えてサン・
ラ・オーケストラとダーディ・ダズン・ブラス・バンドが
合流しながらビッグ・バンド・スタイルのR&Bにアプロー
チした楽しい内容だ。ブライアン・セッツアー・オーケス
トラや吾妻光良&スウィンギン・バッパーズを愛好される
方なら文句なしに気に入ることだろう。アルヴィンのハイ
トーン・ヴォイスに好みは分かれるかもしれないが、ジョ
ー・ジャクソンの『JUMPIN' JIVE』同様に、これは詠み人
知らずの歌への再解釈であり、ことさら継承というテーマ
に寄りかかっていないバー・バンド・ライクなところも良
い。かのリチャード・グリーンをフィドルに迎えアルヴィ
ンが弾き語るCOLLINS CAVEのケイジャン風味、オーティ
ス・ブラックウェル(50年代のエルヴィスに仮歌の指導を
した)のDADDY ROLLIN' STONEは、ザ・フーのヴァージ
ョンとは違うクラブ・ライクな煙草と喧騒の匂いがある。
けっして『ロックの名盤100枚』の類いにはリストアップさ
れることのないこの『UNSUNG STORIES』をポスト・ロ
ックと記したのはそういう願いを込めてのこと。アルバム
の最後にしんみりとGANGSTER'S BLUESが置かれ、それ
までの宴を締めくくる。原色の照明が消え、ミラーボール
の回転が止まり、女たちは化粧を落とす。アルヴィン兄弟
が在籍したブラスターズの快活なロックンロールMARIE M
ARIEもいつしかジュークボックスから外れてしまった。

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by obinborn | 2015-10-08 18:09 | one day i walk | Comments(0)  

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