『ナッシュヴィル・スカイライン』が聞こえてきた

ティム・オブライエンの小説『世界のすべての七月』には、
かつての同級生たちが久し振りに会い、町のバーへと繰り
出していく場面がある。その店のジュークボックスから流
れてくるのはボブ・ディランのLAY LADY LAY。恋人をベ
ッドに誘う設定のあからさまなラブソングだ。その曲を懐
かしがりながら最新のヒップホップに戸惑う彼らは60年代
のベビーブーマー世代であり、もはや新しい音楽について
いけないことが仄めかされている。それでもぼくがこの本
に惹かれるのは60年代という激動の時代に青年期を過ごし
た学生たちの後日談が嘘偽りなく申告されているからだと
思う。ある者は成功し、またある者は悪い罠に陥り人生の
暗い側面を歩んでいくことになる。かつて叫んだ高らかな
理想主義の声は遠くに消え去り、低カロリーの食事と定期
検診が当面の課題。そんなほろ苦い現実を身につまされな
がら読み進めた方も少なくないだろう。

1969年にリリースされたディランの『ナッシュヴィル・
スカイライン』は彼の飾らない告白であり、ロックの英雄
として語られることを拒んだ男の黙示録。ケニー・バット
レイの抑えたドラムやピート・ドレイクの黄金色のスティ
ール・ギターが、しっかりディランの歌と微笑み合ってい
く。そこに聞き取れる言葉と音は、時代を超えながらこう
語り掛けてくるようだ「いつものバーに行こうよ!」と。
その場に語り合える友人がいれば、もう何も説明したくな
い。何の言い訳もしたくない。そこでは28歳になった男が
LAY LADY LAYを歌っている。二度目の吹き込みとなるGI
RL FROM THE NORTH COUNTRYをジョニー・キャッシュ
とともに歌っている。

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by obinborn | 2015-10-23 03:03 | one day i walk | Comments(0)  

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