サイモン&ガーファンクル『BOOKENDS』

江古田の森公園をウォーキングのコースのひとつにしている。
すぐ近くにかつて結核の療養所だった医療施設があるためか、
公園を老人が散歩する姿をよく見かける。ある者は車椅子で
介護士に付き添われながら、またある者は松葉杖を使いなが
ら親族らしき人とともに。彼らと通りすがるたびに思うのは、
自分もいつか将来こうなるのだろうかという漠然とした畏れ
だ。それも若く無防備だった頃に比べれば、親(現在は母親
のみ)の介護を含めて、ぐっと現実味を帯びてきた。

「お年寄りが二人、まるでブックエンドのようにベンチに座
っている。新聞紙が風に揺られて辺りを舞う」そんな歌詞が
印象に残るOLD FRIENDSを収録したアルバム『BOOKENDS』
はサイモン&ガーファンクルが68年に発表した作品だ。トー
タルなテーマとして選ばれたのは老人。当時大きな潮流になり
つつあったフォークやロックのムーブメントが若者によるカウ
ンターを柱にしていただけに、その選択は父親の嘆きを歌った
ザ・バンドの「怒りの涙」と同じくらい衝撃的だっただろう。
今思えば若き思索家たちが思いっきり背伸びしているような
印象もあるのだが、これはこれで若さに寄りかかるのではない
音楽へのアプローチの仕方を教えてくれたと思う。

そんな『BOOKENDS』のなかで、唯一若いカップルをテーマ
にした曲のAMERICAがぼくは好きだった。自分がかつて若か
ったこともあるだろうが、ピッツバークでグレイハウンドの
バスに乗り、サグノウからはヒッチハイクしていく二人の姿
がまるで短編映画のように描かれたことに驚かされたものだ。
前述したテキストで触れたキャシーが、この68年でもサイモ
ンの恋人として、こう呼びかけられている「最後の煙草をく
れないかい?」と。キャシーはオーバーコートのポケットの
なかを探しながら、サイモンにこう答える「私たち、最後の
一本をもう使い果たしてしまったわ」

キャシーとサイモンの後日談はここでは語られていない。そ
れでもポール・サイモンの歌を丁寧に聞き取っていけば、夏
の陽炎のように、冬の枯れ木のように、どれかの曲を通して
その後辿ったキャシーの姿が現われてくるかもしれない。そ
れを聞き手は自由に想像する。歌とはそういうものでいいと
ぼくは願っている。10月最終週の江古田の森を歩き樹木を見
上げてみたら、若葉はいつの間にか黄金色へと姿を変えてい
た。

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by obinborn | 2015-10-26 13:24 | one day i walk | Comments(0)  

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