ジェシ・エド・ディヴィスのギターが聴こえてきた

12月2日に渋谷の喫茶スマイルでアトランティック・レーベル
特集のDJをやるので、少し早いが何となく準備し始めている。
ジャズ及びR&Bのレコード・カンパニーとして始まったアトラ
ンティックはやがて南部のスタックスを全国配給することでソ
ウル音楽を広めた。その一方で65年には同社初めての白人グル
ープとしてヤング・ラスカルズと契約するなど、来るべきロッ
クの時代にもしっかり備える。とくにアトランティックの専属
だったトム・ダウドやジェリー・ウェクスラーといったエンジ
ニア/プロデューサーの存在は大きく、アトランティック傘下の
アトコ・レーベルの発足とともにスワンプ・ロックのブームを
起こしていく。デラニー&ボニー、トニー・ジョー・ホワイト、
ドクター・ジョン、バリー・ゴールドバーグ、ジム・ディキン
ソン、ロジャー・ティリソン、マナサスなどのアルバムをアト
ラン〜アトコのロゴ・デザインとともに記憶に焼き付けている
ロック・ファンは少なくないだろう。またアトランティックは
西海岸のインディだったアサイラムに出資したり、オーティス
・レディングのマネジャーだったフィル・ウォルデンが新たに
始めたサザン・ロックのキャプリコーン・レーベルと提携した
りと、70年代初めの新しい息吹きへと積極的に関与していく。
ストーンズ・ファンなら彼らが自主レーベル=ローリング・ス
トーンズの配給をアトランティック・グループに委ねつつ、黄
金時代を築いていったことを思い起こすかもしれない。

アトコ・レーベルのあまたの名盤のなかでも個人的に最も忘れ
難いのがジェシ・エド・ディヴィスのセカンド・アルバム『U
LULU』(ATCO SD33-382)だ。レコーディング・ロケーショ
ンはフロリダのクライテリアに、ロスアンジェルズのレコード
・プラント及びヴィレッジ・レコーダーズと計三カ所に股がり、
ドクター・ジョン、レオン・ラッセル、ブレッドのラリー・ネ
クテル、ザ・ホウクスのメンバーとしてリヴォン・ヘルムらと
苦楽を共にしたスタン・セレストなど、曲によってキーボード
奏者を適材適所に配する一方で、リズム・セクションに関して
は全編ダック・ダンとジム・ケルトナーのコンビネイションに
委ねるなど、英国のオリンピック・スタジオで録音されたファ
ースト同様に、ジェシが自らプロデューサーの一員を務めてい
る姿が印象的だ。クライテリアでの録音に関しては、マナサス
やジム・ディキンソンや デラニー&ボニー&フレンズの名盤
との共通項を探ってみるのも面白い。

楽曲としてはマール・ハガードのベイカーズ・フィールド・
カントリーWhite Line Fever、バングラデシュのコンサート
を介在に友好関係を結んだジョージ・ハリソンのSUE ME,SU
E YOU BLUES、ザ・バンドのザディコ的なアプローチSTRA
WBERRY WINE、レオン・ラッセルのALCATRAZ、アメリカ
の伝承曲OH!SUSANNAHと計5曲のカバーがある。その一
方でジェシのオリジナルも光る。「オレはビートルズでもス
トーンズの一員でもない。オレは心のままに歌うヨ!」とい
う歌詞があるRED DIRT BOOGIE,BROTHERが冒頭に置かれ
たことの意味を考えたい。むろんその背後にあるのはタージ
・マハールのギタリストとして渡英し、ストーンズが主宰す
る『ロックンロール・サーカス』に唯一アメリカからのアー
ティストとして招かれ、ジョン・レノンやキース・リチャー
ドと接点を持ったことなのだが、自分はそうした有名バンド
には寄りかかるまいとするジェシの人間宣言を感じ取れるこ
とだろう。60年代の恩師であるタージのアルバム『GIANT S
TEP』ではAIN'T GWINE WHISTLE DIXIEというタイトルで
収録されていたタージとジェシの共作FARTHER ON DOWN
THE ROAD(YOU WILL ACCOMPANY ME)では、レズリー・
スピーカを通したジェシのリズム・ギターが歌伴の鑑のよう
に映し出された。そして恩師タージに捧げられたMY CAPTA
INでのスライド・ギターはどうだろう。その運指はけっして
流麗とは言い難く、むしろ不器用そのものだったが、一音一
音に祈りを込めていくようなフレージングに筆者は胸を突か
れた。デイヴ・メイソンがLOOK AT YOU、LOOK AT MEで
聞かせた押弦によるソロとともに、最も讃えるべき歌伴ギタ
ーのソロ・ラインがそこにあった。

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by obinborn | 2015-11-06 18:19 | one day i walk | Comments(0)  

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