ドニー・フリッツの新作『Oh My Goodness』を聴いて

「マスル・ショールズで好きな郷土料理かい?いい質問だ!
そうだなあ、チキン&コーンブレッド・ドレッシング(日本
で言うサラダのドレッシングではなくスタッフィング=詰め
物のこと)だね。あとはミートローフ、マッシュト・ポテト
がソウル・フードだよ!」そんな風にインタヴューで答えて
くれたのが、もう6年前のこと。ドニー・フリッツが久し振
りに新作『OH MY GOODNESS』を発表した。一時は命が危
ぶまれるほどの大病を患った彼だが、すっかり健康を取り戻
し、09年の秋には待望の来日公演をディーコイズのメンバー
とともに実現させた。そんなことも懐かしい。

その際のライヴ盤を含めると通算5作めとなる今回の新作は、
より内省的な響きが心を打つ。これまで以上に音数が少ない
こともあって、バンドのグルーヴを目指した結果というより、
ソングライターとしてドニーが最新の報告を行ったというニ
ュアンスだろうか。彼の盟友だったアーサー・アレクサンダ
ーが遺作で取り上げたIF IT'S REALLY GOTTA BE THIS WA
Yや、スプーナー・オールダムのピアノをバックに歌うアル
バム表題曲を聞いていると、生き残った者が日々の愛おしさ
を噛み締めているようで、つい自分の加齢とも重ね合わせて
しまう。60年代にボックス・トップスへと提供したCHOO C
HOO TRAINの作者版は彼なりの回想録であろうか。「ダン・
ペン&ポールベアラーズが次の扉を開けたんだよ」というリ
リックがあるTUSCALOOSA 1962も何やら自伝的だ。ジェシ
・ウィンチェスターのFOOLISH HEARTとガスリー・トーマ
スのLAY IT DOWNとが2曲連なる辺りは、ドニーが自分以外
の同世代のソングライターを見つめたような極上の味わい。

アラバマ州の故郷フローレンスでのレコーディングで、幾つ
かのオーバーダビングをナッシュヴィルで行った以外は極め
て地味なホーム・アルバムだが、こんな枯淡の世界とともに
暮れなずむ黄金色の空を見上げるのも悪くないだろう。この
男が今日も問い掛けるのは自分の良心であり、彼と仲間たち
が奏でる音楽は、その領域を温め直し守護するかのよう。世
間の喧騒とはまるで別の場所から然るべき歌が聴こえてくる。
あの無邪気なCHOO CHOO TRAINにMG'SのTIME IS TIGHT
のリフが混ざってくるんだから、ホントたまらないよね。

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by obinborn | 2015-11-19 18:36 | one day i walk | Comments(0)  

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