12月3日の木下弦二

3日は吉祥寺のスターパインズ・カフェで木下弦二のライブを。
彼にとって初のソロ・アルバム『natural fool』のレコ発(先
行発売)だっただけに会場は大入りの祝祭感に包まれた。それ
でも彼は普段通りの気さくな歌と演奏を淡々と進めるだけ。そ
んな展開にますます好感を持った。ぼくは東京ローカル・ホン
クと合体した時の弦二の緊密な演奏が最も好きだが、セミアコ
の弾き語りを中心にした今晩のような内容だと、よりソングラ
イターとしての素の部分に触れる思いがする。そうした歌とギ
ターの場合でもほとんどフォーク的にはならず、むしろジョア
ン・ジルベルトやカエターノ・ヴェローゾといったブラジル音
楽の芳香を湛える辺りに非凡な感性を感じる。弦二本人がどこ
まで意識しているのかは解らないが、この人には歌の多義性に
すべてを賭けているような部分がある。もう少し優しい言葉で
言えば、歌に解り易い起承転結を求めるのとは真逆の、聞き手
たちそれぞれにイマジネーションを委ねる作法だ。作者はあく
まで言葉と音によるスケッチをするだけ。後は自由に色を塗っ
てください、とでも言いたげな。最も感動的だったのは神の不
在について歌った「身も蓋もない」あるいは彼が静岡で試みた
連詩の「また会おう」だろうか。平易な言葉たちが互いに語り
合い、反応を確かめ合いながら、港からそっと舟を漕ぎ出して
いく。そんな光景にも似た静謐で得難い夜だった。

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by obinborn | 2015-12-04 01:18 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

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