38年めの『ラヴ・ユー・ライヴ』を聴いて

75年の北米ツアー及び76年の欧州公演から抜粋された『
ラヴ・ユー・ライヴ』は当時のストーンズの総決算と言っ
ていいでしょう。かつて帯同していたボビー・キーズやジ
ム・プライスのホーン・セクションが取り払われた代りに、
ビリー・プレストン(kbd)とオリー・E・ブラウン(perc)
が参加するというサポート・メンバーのマイナー・チェン
ジにも注目したいところで、この二人のアフリカン・アメ
リカン・ミュージシャンの貢献によって、ストーンズの演
奏はさらにコクのあるブラック・テイスト満載のものとな
りました。またミック・テイラーに代わって新参加したロ
ニー・ウッドのギターに関しては、テイラーのような光沢
のあるソロラインは求められないものの、リズミックな語
彙に長けたリックに地味ながら彼のセンスを感じます。こ
の頃キースが「ロニーと一緒にプレイしていると初期のス
トーンズのオリジナル・アイディアに戻れるんだよ!」と
発言していたのも忘れ難いエピソードです。

アルバムはアーロン・コープランドの「庶民のファンファ
ーレ」で幕を開け、キースのゆったりしたカッティングが
聴衆をじらしながら盛り上げていく「ホンキー・トンク・
ウィメン」へと繫がっていきます。「イフ・ユー・キャン
ト・ロック・ミー」とメドレー形式で歌われる「一人ぽっ
ちの世界」にしても、60年代のビート・バンド時代とはま
るでニュアンスの違うファンク感覚が斬新であり、ミック
と掛け合うビリー・プレストンの黒光りするヴォーカルが
圧巻です。実際のコンサートよりも早めにセットされるキ
ース・タイムではあの「ハッピー」が登場!これに関して
はテイラーのスライド・ギターで聴きたかったという気持
はありますが、ロニーの粗野な演奏も悪くないですよ(あ
えてテイラー期のブートレグのお話はしません)

このライヴ・アルバムを特別なものにしているのは、通称
「エル・モカンボ・サイド」として親しまれてきたC面で
しょう。カナダはトロントにあるクラブ、エル・モカンボ
で繰り広げられた77年3月の秘密ライブを収録したこの面
では、まるで彼らがデビュー以前にマーキーやクラウディ
ーといった、アンダーグラウンドなクラブで演奏していた
頃を彷彿させるような原点回帰が見事です。そんなバック
・トゥ・ザ・ルーツを証明するかのような選曲が素晴しく、
マディ「マニッシュ・ボーイ」ボ「クラッキン・アップ」
ウルフ「リトル・レッド・ルースター」ベリー「アラウン
ド・アンド・アラウンド」と、全4曲すべてがチェス・レ
ーベルで活躍した黒人音楽家の代表曲でキメられています。
60年代に正規レコーディングされた「ルースター」と「ア
ラウンド」に関しては、本作での演奏と聴き比べてみると、
ストーンズの77年がよりニュアンスに富んだものへと変化
していたことに誰もが気が付くでしょう。

ちなみにこのアルバムが発売された77年の秋といえば、私
は田舎の公立学校に通っていた高校生であり、当時同じ2
枚組のライブ盤を買うなら本作とUFOのどちらを選ぼうか
と真剣に悩んでいました。今でもバイト先の同期生から「
なんでUFOを買わなかったんだよ!」と冷たくされたこと
を昨日のように思い起こします。それはともかくとして、
『ブラック&ブルー』とこの『ラヴ・ユー・ライヴ』が私
にとってリアルタイムで接した初めてのストーンズ体験で
した。ダブル・アルバムながら米国では5位、英国では3位
とチャート・リアクションでも健闘した本作は、スティー
ル・バンド・アソシエーション・オブ・アメリカによるパ
ーカッション群と鮮やかに合致した「悪魔を憐れむ歌」で
幕を閉じます。スタジオ・アルバムでロッキー・デイジュ
ーン(やがてタージ・マハール・バンドへ参加したガーナ
出身のコンガ奏者)と出会ったエポックな名曲の再現。こ
うした演奏からロックとアフリカ音楽との関連に思いを馳
せることも悪くないですよ!

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by obinborn | 2015-12-27 05:03 | rock'n roll | Comments(0)  

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