俺たちに必要なのは金さ!

プロテストソングについて延々と噛み合ない論議を続けて
いたら疲れてしまった。世の中には理解出来ない種類の人
や話しても解らない奴がいるものだ。だいだい発端となっ
たテキストを読んでみれば、小説という活字メディアと映
画という視覚媒体の違いを具体的に指摘し、それぞれの役
割を肯定的に考えようという論旨であり、よって音楽とい
う”音”メディアの特性は自ずと見えてくるだろうと結んだ
のだった。どうせ大したロジックも持たず、単に私の存在
が気に喰わないからという程度の理由で絡んできたのだろ
う。正月の三が日もまだ終わっていない時にまったく迷惑
な話である。しかもアカの他人に向かってプロテストソン
グ・アレルギーだと決め付けるのだから我慢ならない。念
のために言っておくと世の中には素晴しいプロテストソン
グが沢山ある。古くはゴスペルの世界で歌われてきたI Sha
ll Be Not Movedを例にとっても、近年メイヴィス・ステイ
プルが公民権運動の戦いは今も続いているというテーマの
もとで「私は席を動かない」と歌えば、あの忌まわしいバ
ス・ボイコット事件が自然に浮かび上がってくるし、ガー
ランド・ジェフリーズはHail Hail Rock N Rollという歌のな
かで黒人の少年を主人公に設定しながら、「タクシーは僕
を無視し次の角で白人を拾っていった」という痛烈な歌詞
を歌わせている。白人なら乗車させるのかという歴然たる
事実を目の当りにした彼の心を想像すると私の胸はいつも
潰れそうになる。しかしこの歌に奥行きがあるのは単なる
白人へのアンチに終わらず、エルヴィス・プレスリーやジ
ェリー・リー・ルイスやバディ・ホリーといった白人アー
ティストを、チャック・ベリー、リトル・リチャード、フ
ァッツ。ドミノといった黒人音楽家たちと同様に讃えてい
ることにあった。他にもオハイオ州立大学ケント校でデモ
隊に警官が発砲して4人の学生が死亡した事件に抗議した
ニール・ヤングのOhioなどはロック・ファンにおなじみだ
ろう。そのニールが9・11事件の際「イマジン」を弾き語
り、佐野元春が「光」を歌ったのも負の連鎖への戒めであ
った。ついでながら付記しておくと佐野の「光」は2000年
当時まだ黎明期だったダウンロード配信で自主配信され、
彼が所属していたエピック・ソニー・レコードを激怒させ
ている。以上のことからも私がプロテストソングに価値を
見出していることが解るだろう。ただ私が問題提議したの
はあまり音楽性がないプロテストソングは面白くないとい
う率直な感想であり、またそれらの歌が特定の政治団体に
利用されると本来の役割を失い、別の様相を呈し始めます
よという警告である。極端なハナシ、新興宗教の団体がビ
ートルズのAll You Need Is Loveを使って信者勧誘するこ
となど、案外近い将来に於けるシュールな光景になり得る
かもしれない。そこら辺の危険性を鋭く見抜いて「オレた
ちに必要なのは金だけだ!」と返したフランク・ザッパの
シニシズムとユーモアを私は愛する。そう、善意が必ずし
も善意として機能しないところに現代社会の複雑さがあり、
どんな信念に基ずいた行動であれ熱狂を孕み始めると危う
くなるのだ。そうした現実に直面した時に対象と一定の距
離を保ちながら醒めた部分を失わないというのが、今も昔
も変わらない私の行動基準なのである。
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by obinborn | 2016-01-07 13:43 | rock'n roll | Comments(0)  

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