久し振りにジミ・ヘンドリクスを聞いた

最初にヘンドリクスのLPを購入したのは私が高校を卒業した
76年の春のことで、そのアルバムは彼の最終作『クライ・オ
ブ・ラヴ』だった。次に買ったのがサウンドトラック盤の『
天才ジミ・ヘンドリクスの生涯』だった。これは当時新譜と
して発売されたニール・ヤングの『ラスト・ネヴァー・スリ
ープス』と一緒に買ったから、多分79年頃のことだったと思
う。その帰り道にマルチ商法のセールスマンに声を掛けられ
無理矢理車のなかで説明を受けたことまで覚えている(あの
時逃げ出さなかったら私は道を間違えただろう)この『生涯』
は73年にワーナー・パイオニアから日本盤も発売された2枚
組だったが、以降廉価版としてリイシューされ私はそちらの
方を求めたのだった。映画のほうは今もって未見だが、音源
自体はヘンドリクスのキャリアをてっとり早く把握出来るも
ので、67年のモンタリーからHEY JOE、ROCK ME BABY、
LIKE A ROLLING STONE、WILD THINGの4曲、70年のバー
クレーからJOHNNY B GOODEとPURPLE HAZEの2曲、69
年のウッドストックからTHE STAR SPANGLED BANNER、
70年のワイト島からMACHINE GUN、RED HOUSE、IN FR
OM THE STORMの3曲、69年のフィルモア・イーストから
MACHINE GUNの別ヴァージョンが選曲されている。いずれ
も各地でのライヴで統一されているのが素晴しい。その上で
ヘンドリクスが67年のロンドンでスタジオ録音したギターの
弾き語りHERE MY TRAIN-A COMIN'と、サントラらしくイ
ンタヴューも収録されている。金のない(今もだけど)青年
にとってこのアルバムは宝物に違いなかった。音楽的なこと
を書いておこう。やはりとくにMACHINE GUNの2ヴァージ
ョンが際立っている。彼はプロとしてデビューする以前アメ
リカ陸軍のパラシュート部隊に属していたが、それがヴェト
ナム戦争で実践される恐れのようなものを感じ取っていたの
だろう。この曲を聴くと今でも空から落下していく時の、ぞ
っと身がよだつような恐怖を感じる。歌詞も付いているが、
言葉以上にエレクトリック・ギターの生々しい音でそうした
複雑な感情を描いたところにきっと価値がある。例の半音上
がり下がりのフレーズでの模写がそれを雄弁に物語っていて、
「戦争はいけません」なんていう美辞麗句以上の体験を聞き
手である私たちに促すかのようだ。今現在では遺族の意向に
よりヘンドリクスのスタジオ・アルバムが整理され、またラ
イヴ音源に関しても価値ある発掘が為された。その一方でか
つて発売されていた『クラッシュ・ランディング』など幾つ
かのアルバムが市場から抹殺されてしまったことが残念でな
らない。この『天才ジミ・ヘンドリクスの生涯』もまたそん
な一枚だ。どんなにリマスターされいい音になったとしても、
青年期に接したジミヘン体験には代えられない。そんなこと
を思いながら聴くこの『生涯』は格別だ。かつてはギターを
中心に堪能していた11分越えのブルーズ・ナンバーRED HO
USEだが、彼がヴォーカルと対となりながらギターを奏でて
いたことが今の私にはよく解る。

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by obinborn | 2016-01-09 18:46 | rock'n roll | Comments(0)  

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