James Taylor 『Never Die Young』

88年にリリースされた『Never Die Young』はジェイムズ・
テイラーにとって通算12作めのアルバムにあたる。ツアー
をともにするキーボードの名手ドン・グロニックをプロデ
ュースに迎えた初めてのアルバムであり、従来パートナー
の多くを務めたピーター・アッシャーとの違いが注目される
結果となった。一聴して解るのはアッシャーのプロデュース
が基本的に骨太なバンド・サウンドを重視していたのに対し、
グロニックは自身のキーボードを中心としたスコア・ライク
なアレンジへと舵を切ったことだ。優れた鍵盤奏者は自覚的
なベーシスト同様、”裏メロ”を綺麗に拾い上げつつ弾くこと
に長けているが、そんな美点の極致は表題曲のNever Die
YoungとHome By Another Dayに聞き出せる。浮遊感のある
キーボードといえば80年代にありがちだった威圧的なそれを
思い浮かべる方もいらっしゃるだろう。しかしグロニックの
場合はきっとバンドリーダーという自覚があったに違いない。
丁寧に裏メロを生かし、コーラス隊も含めた和声を徹底的に
考え抜いた編曲に閃きを感じずにはいられない。またブルー
グラス界の名フィドラーであるマーク・オーコナーを2曲で
起用するなど、近年のJ.Tに顕著なアメリカーナ回帰への伏線
もある。このアルバムがリリースされた80年代後半には筆者
の周りでもジェイムズを話題にする人はもはや皆無に近かっ
た。それどころか彼の存在を揶揄するような”進歩人"まで大手
を振って歩いているほどだった。時代に流されたのはどちらだ
っただろう?真冬のような試練に耐えながらも自分自身の歩み
を信じ、歌を紡いでいったのはどちらの側だろう?そんなこと
を『Never Die Young』は今日もしっかりと問い掛けてくる。

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by obinborn | 2016-01-26 18:28 | one day i walk | Comments(0)  

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