再び、ヒックス氏に愛を込めて

「オッケー、ダン・ヒックスの音楽が親しげに語り掛けてくる
ね。ときにランバート・ヘンドリクス&ロスのように感じるか
もしれないけど、もっと独特なものでちょっとうまく言い表せ
ないよ」72年の名作『Stricking It Rich』に寄せられたベン・シ
ドランのライナーノーツはそんな風に始まっている。また彼は
文中でアメリカン・コミックのロバート・クラムとヒックスと
の関連に言及する鋭い洞察力を見せていた。あるいは英See F
or Milesで組まれたベスト盤はどうだろう。ジャック・モート
ンはこう言う「ジャズの陰があるよね。ランバート・ヘンドリ
クス&ロスのクロース・ハーモニーと戦前のパリ・ジャズ、つ
まりジャンゴ・ラインハルトとステファン・グラッぺリのホッ
ト・クラブ風スウィングが混ざり、そこにラヴィン・スプーン
フルのうぬぼれとヒルビリー・カントリーが加わったような」

今回様々な方がヒックスの追悼文を書かれていて、いかに彼が
愛されていたかを改めて思い知った。そのなかでも宮井章裕さ
んが、30歳になりこれまで聞いてきた音楽と違うものを求めよ
うとしていた時、ダン・ヒックスが音楽の幅を押し広げてくれ
たといった旨を書かれていたのが印象に残った。というのもそ
れこそヒックスの果たした役割だと思ったから。昨日筆者が触
れたように、ロックのサークルそれも60年代のカウンター・カ
ルチャーの震源地であるシスコ一帯から、ヒックスのようなオ
ールド・タイム指向の音楽家が現われたのは本当にユニークな
事件だったに違いない。私と同じ世代ではこのヒックスやライ
・クーダー、ロバート・クラムのチープスーツ・セレナーデズ
らをきっかけにオールド・ジャズやラグタイムにのめり込んで
いった人達が少なくない。そうした意味でもダン・ヒックスは
間違いなくぼくらの英雄であり、ユーモアと探究心に溢れたそ
の音楽はささやかな勝利を収めたと信じたい。

挙げた音源は第二期ホットリックスが解散後の78年に、ヒック
スが初めて作ったソロ・アルバムから。実際にはホットリック
スのメンバーも一部参加しているので、これまでの作品と地続
きですんなり入っていけた記憶がある。ニック・デカロが取り
上げたCanned Musicのように、こうしたロマンティックな曲
をものに出来るのもヒックスの懐の深さを物語っている。ひょ
うきんな振り付けで笑わせるかと思えば、こうした歌でしっと
りと涙を誘う。ダン・ヒックスはそんな人間味溢れる男だった。


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by obinborn | 2016-02-08 15:25 | one day i walk | Comments(0)  

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