テデースキ・トラックス・バンドの新作『LET ME GET BY』を聞いた
クス・バンドの新作『Let Me Get By』だ。グループにとって
は3作めのスタジオ・アルバムで、ライブ盤を含めれば通算4
枚めとなる作品だが、ホーンズやツイン・ドラムスそしてコー
ラス隊を含めた10人編成という大所帯ならではのダイナミズム
溢れる演奏に聞き惚れてしまう。こうした大らかなグルーヴに
アメリカのロックが培ってきた様々なエレメントを発見するヴ
ェテラン・リスナーも少なくないだろう。夫婦をフロントに押
し出しているという点ではかつてのデラニー&ボニー&フレン
ズを、ソウル〜ファンクへと針が振れた時にはスライ&ザ・フ
ァミリー・ストーンの家族を思い起こさせるTTB。彼らこそは
現在最高のロック・バンドと言っても過言ではあるまい。昨年
はかつてのマッドドッグス&ザ・イングリッシュメンを再現す
るR&Bレヴューを行い、全米各地で話題を振り撒いたことが記
憶に新しい。
結成当時はデレク・トラックスのギターだけが注目されるキラ
イがあったとは思う。デュエイン・オールマンからスティーヴ
ィ・レイ・ヴォーンまで、ことさらギター英雄ばかりが持て囃
されるのはブルーズの世界でもロックのフィールドでも同じこ
とだ。ただTTBが奏でる音楽をトータルに見渡せば、むしろス
ーザン・テデースキの歌に寄り添いながら、ここぞという場面
でスライド・ギターを飛翔させていくデレクの慎ましい姿が見
えてくる。いわばソング・オリエンテッドな部分と、90年代以
降のアメリカで大きな潮流となったジャム・バンドならではの
自由闊達な世界が見事なまでの超克を示した。そんなところに
彼らの”古くて新しい”音楽の秘密があるのだろう。
先ほど大らかなノリを感じると筆者は記したけれど、その背後
にはむろんメンバー10人全員による精緻なスケッチがある。そ
れらの呼吸感、各自が自在に押し引きしつつそれぞれの役割を
果たしていることを感じ取りたい。フロリダはジャクソンヴィ
ルにあるTTBのスワンプ・ラガ・スタジオで行われたレコーデ
ィングはほぼ一発録音だったと伝えられている。それらを名手
ボブ・ラドウィグが克明にマスタリングした。そのことの価値
を思わずにいられない。ジャケットに描かれた飛翔する鳥の姿
が、まさにテデースキ・トラックス・バンドの現在を捉えてい
る。
by obinborn | 2016-03-16 18:39 | rock'n roll | Comments(3)
ああ、ホンクも楽しかったですねー。。