かつて辿って来た以上の自由〜『サタニック・マジェスティーズ』
ズ』を経たストーンズの次なるステップが67年の暮れにリリ
ースされた『サタニック・マジェスティーズ』だった。『バ
トンズ』のベーシックな録音が西海岸のRCAスタジオでスタ
ートしつつも、最終的にはグリン・ジョンズのエンジニアリ
ングによってロンドンのオリンピック・スタジオで仕上げら
れたように、『サタニック』の録音もジョンズの元、同スタ
ジオで行われた。以降『ベガーズ』や『ブリード』といった
傑作がオリンピックで生まれたことを思えば、その基礎固め
となったアルバムという見方も出来るだろう。但し発売当時
の評価は『サージェント・ペパーズ』の物真似ではないか?
と散々たるものだった。ルーツ・ロック指向の筆者自身、長
いこと邪道だと思い込んでいたフシがある。しかし何度も丁
寧に聞き直すうちにそんな認識がいかに浅はかなものである
か解ってきたのだ。冒頭を飾るSing This All Togetherの主旋
律の最後にNow~と突如中近東的な音階が飛び出し、タブラ
が打ち鳴らされるエスニックな展開などまさに象徴的だろう。
アラブ~中近東的なアプローチとしては、Gomperのシタール
も聞き逃せない。ここら辺は同時期のジョージ・ハリソンや
ドノヴァンといった英国アーティストのみならず、デヴィッ
ド・リンドレーが在籍したサイケデリック・グループである
アメリカのカレイドスコープとも共振した”非西洋圏音楽”へ
の思いが聞き取れる。楽曲としてはやはりB面のShe's A Ra
inbowと2000 Light Years From Homeがとくに印象的だ。
89~90年のスティール・ホイールズ・ツアーで後者がリスト
に加わったことに狂喜された方も少なくないのでは?両者と
もにサマー・オブ・ラヴの時代ならではのカラフルな色合い
とスペーシーな広がりのあるサウンドが素晴しい。また隠れ
た人気曲としてはThe Lanternのフォーキーな味わい、Citad
elでのエッジの効いたギターも極上のトリップへと誘ってく
れる。前述したShe's A Rainbowは90年代にアップル・コン
ピュータのCMソングとして甦り、若いコに「誰の曲ですか
?」なんて尋ねられたっけ。その編曲はレッド・ツェッペリ
ン結成以前のジョン・ポール・ジョーンズであり、彼がミッ
キー・モストに雇われてドノヴァンの音楽を押し広げていた
ことも同時代ならではの符合であろう。全編でキラキラとし
たピアノを弾くニッキー・ホプキンスの存在も、以降暫くス
トーンズに欠かせないものとなった。英米で初めて曲目のシ
ークエンスが一致したこの『サタニック』について、ミック
・ジャガーはこんな風に回想している「ぼくたちがShe's A
RainbowとCitadelと2000 Light Years From Homeをレコー
ディングした時、かつてぼくたちが辿ってきた道のり以上の
フリーキーな精神を感じたのさ!」
by obinborn | 2016-04-07 18:49 | rock'n roll | Comments(2)
かなり前の記事にコメントしてすみません。『サタニック・マジェスティーズ』大好きなので。特に私の大好きなGomperについて書いて下さっているのが嬉しかったです。CitadelやThe Lanternも最高ですね!
小尾さんの8月31日のfacebookに、自宅DJのセットリストがありましたが、ストーンズの選曲がとても興味深かったです。一曲目からWhat a Shameってたまらないですねー。ラストがJust My Imaginationというのもいいです。Keith TimeのLittle T&Aもいいですね~!
だんだん秋らしくなってきましたが、お体に気をつけて!
良いですよね。ぼくも聞き直す度に(今も聞いています)深み
にハマっていきそうです。ストーンズの自宅DJのリストも見て頂いたみたいで、こちらも嬉しいです。実際のステージが
こんな選曲だったらいいなあ〜という願望を込めました。と
まあ限りなく自己満足ですが(笑)そちらはすっかり秋なんで
しょうね。お元気で。