77年5月のグレイトフル・デッド

77年のグレイトフル・デッドといえば彼らのオウン・レーベル
が破綻し、コロンビア・レコーズのクライヴ・ディヴィスが新
たに興したアリスタへと移籍し、『テラピン・ステーション』
をリリースするという転換点に立った年だった。そんな彼らは
37日間で26回のショウを行うスプリング・ツアーに繰り出し、
全米各地で昔と少しも変わらない歓迎を受けた。そのなかから
5月28日にコネチカット州のハートフォード市民会館で催され
た公演を収録したのがこの『TO TERRAPIN』であり、09年に
ライノから3枚組のCDで発売された。彼らのアーカイブ音源は
例のディックス・ピックス・シリーズを始め数え切れないほど
あるが、音質面でこの『TO TERRAPIN』は群を抜いているこ
とを特筆しておきたい。またメンバーにしてもキース&ドナ・
ゴドショウが在籍していた後半に当たり、79年からはブレンド
・ミッドランドへと交代し、キーボードの音色がモダンなもの
に変質してしまった。そんな意味でもまだ素朴だった時代のデ
ッドを捉えた最後のライブだったのかもしれない。むろんミッ
キー・ハートが復帰してツイン・ドラムス(パーカッション)
体制となったダイナミズムは健在だ。

今も熱心なデッド・ファンの間ではアリスタ・イヤーズはす
ごぶる評判が悪い。私もローウェル・ジョージがプロデュー
スした78年の『SHAKEDOWN STREET』を除けば、今では殆
ど聞かない時期なのだが、やはりライブでは彼ら本来の伸びや
かさが存分に発揮されているのが嬉しい。とくにディスク3の
ESTIMATED PROPHET>PLAYING IN THE BAND>DRUMS
>NOT FADE AWAY>WHARF RATの長尺インプロには息を
吞まずにはいられない。また楽曲単位で言えばSUGAREE での
ジェリー・ガルシアの優しい歌が終わると、すぐさまボブ・ウ
ェアが野趣溢れる声でヒッピー讃歌JACK STRAWを歌い始める
などセットリストにもしっかりとした起伏が感じられる。ご存
知の方々もいらっしゃるだろう。アルバムの主題となったTER
RAPIN組曲はウサギと亀の寓話に着想を得ている。いわば素早
く走り抜けるか、のんびりと自分の歩調で進めるか。77年と言
えばパンク・ロックが狼煙を上げた最初期であろう。そんな変
わりゆく時代のなかで、自らを亀になぞらえたデッドのことを
思うと何だか切なくなってしまう。

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by obinborn | 2016-04-20 18:18 | one day i walk | Comments(0)  

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