ジョン・セバスチャン「Stories We Could Tell」

ジョン・セバスチャンのバックカタログが現在どうなっている
のか気になって、amazonで検索してみたら軒並みMP3音源ば
かりで複雑な気持になった。彼に限らず、今後はこうした傾向
にますます拍車が掛かるのだろう。だが何も気にすることはな
い。ダウンローディングの音質に満足出来ない人のために中古
レコ屋さんがあるのだし、アナログ・レコード復活の兆しも嬉
しい。いたずらに状況を細かく分析するより、音楽そのものが
「こんなにもいいんだよ!」と、しっかり語り伝えていくこと
のほうが案外突破口になるのでは、と思っている。

セバスチャンにとって3作めとなる『TARZANA KID』は74年
にリリースされた。当時国内盤の発売が見送られてしまい、ぼ
くはだいぶ後になってから輸入レコードを新宿のCISCOで買っ
た。生粋のニューヨーカー〜都会っ子であり、ラヴィン・スプ
ーンフルで洗練された音楽を歌ってきた彼が、ジミー・クリフ
のSitting in the Rimboやローウェル・ジョージのDixie Chicken、
あるいはカーター・ファミリーでおなじみのWild Wood Flower
などを取り上げていることに驚かされた。むろんスプーンフル
時代から彼はブルーズやジャグなど、自国アメリカの古い音楽
に着目してきたのだが、表看板はあくまでDo You Believe In M
magic?、Daydream、Summer in the Cityといったポップ・ヒ
ットの数々だっただけに、びっくりさせられた。

アーシーな指向性を深めた頂点は、A面最後に収録されたFace
of Appalachiaだろうか。セバスチャンとローウェル・ジョージ
が手を携えながら作った楽曲であり、ローウェルがスライド・
ギターを弾き、デヴィッド・リンドリーがフィドルを奏でるそ
の演奏からは、70年代を模索していったセバスチャンの姿が
浮かび上がってくる。そういえば当時の彼には、第一期リトル
・フィートが息詰まっていたローウェルに声を掛け、フィル・
エヴァリーを誘いながら三人で新しいグループを組む計画が
あったとか。久し振りに復活したエヴァリー・ブラザーズが
セバスチャンのStories We Could Tellをアルバム・トラックと
して配したのも、まさにこの時期。三人によるそのバンドは
結局夢のままに終わってしまったが、その断片をこの『TAR
ZANA KID』に聞き取ることは可能だろう。

『TARZANA』アルバムに収録されたStories We Could Tellの
作者版では、フィル・エヴァリーがセバスチャンと声を合わせ
ながら、こう歌っている「たとえ強風が吹き荒れ/悪い予感に
苛まれる日々があったとしても/ぼくは投宿先のベッドで/我々
が今朝も健在だと知ることでしょう/ぼくたちが伝えられるの
はそんな歌なのさ」

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by obinborn | 2016-06-14 18:57 | one day i walk | Comments(0)  

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