ウィルコ・ジョンソンは帰っていく故郷のことを考えさせる

ウィルコとロジャーの『GOING BACK HOME』(2014年)を
LP盤で入手!リー・ブリローと喧嘩別れした後はずっと自ら歌
ってきたウィルコが、やっと本格的なヴォーカリストと出会え
たという意味で、本作はエポックだった。まるで溶接工のよう
にタフなロジャーの歌を得て、ウィルコのマシンガン・ギター
も水を得た魚のよう。二人の出会いは英MOJO誌の授賞式での
こと。むろんそれまでも互いを認識していただろうが、二人は
「お前もR&Bが好きなだけやん!」とすぐさま意気投合したら
しい。アルバムの主旨はウィルコのこれまでのキャリアを振り
返るもので、フィールグッド時代からソロまでの代表曲がリメ
イクされ、そこにウィルコ永遠のアイドルであるボブ・ディラ
ンの「窓から這い出せ」が加わる。また本作での演奏は盟友ノ
ーマン・ワット・ロイbにディラン・ハウdsと、あくまでウィ
ルコ・ジョンソン・バンド主導で録音されている。当時末期の
癌と宣告された(のちに誤診と判明)ウィルコの気持を汲めば、
まるで自分の家族のように、長年苦楽を共にした仲間と最後に
なるかもしれないレコーディングに臨んだのは当然の選択だっ
たろう。わずか2年前のこととはいえ、そんなことひとつひと
つを思い出しているうちに胸が一杯になってくる。アルバムが
Going Back Homeに始まり、All Through The Cityで終わると
いう構成が実に泣かせる。つまりドクター・フィールグッド最
初期のナンバー2曲を最初と最後に据えることで、ウィルコが
青年期を駆け抜けたフィールグッズへのオマージュになってい
るのだ。その想いが聴こえる人にはちゃんと届くことだろう。
付属されたブックレットにはウィルコとロジャーそれぞれの若
き時代の写真が添えられている。私がザ・フーの『ライヴ・ア
ット・リーズ』に夢中だった頃、あるいはフィールグッズの登
場に衝撃を受けた頃、まさか二人が21世紀になってから心を通
わせ、新たな名盤を産み落とすとは想像も出来なかった(長生
きはするものだ)片やスタジアム・ロッカー片やパブ・エリア
と、ロジャーとウィルコでは置かれた環境こそ異なるものの、
費やされた長い歳月の間にもたらされた寛容な心が、この二人
をしっかり結び付けた。まるでブリティッシュ・ロック50年の
歩みを凝縮するかような『GOING BACK HOME』は、私に帰っ
ていく場所や故郷のことを思い起こさせる。

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by obinborn | 2016-08-12 17:55 | rock'n roll | Comments(0)  

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