ロジャー・ティリソンとフォー・トップスの不思議な関係

フォートップスのモータウン・ナンバー(作曲はスティーヴィ・
ワンダー)を何故スワンパーのロジャー・ティリソンがカバーし
たのかは長年の謎だった。それでもロジャーと親交があったザ・
バンドのリック・ダンコが憧れたベーシストはモータウンのジェ
イムズ・ジェマーソンであり、ザ・バンドはマーヴィン・ゲイの
「ドント・ドゥ・イット」を好んで演奏してた。また『ロック・
オブ・エイジズ』の拡大版では、遂にフォートップスのこの曲を
演奏する彼らの姿を確認することが出来た。となると、ジミー・
マーカム・タルサ・レビューが解散してからのロジャーが、同バ
ンドにいたリヴォン・ヘルムの誘いでウッドストックに移り住ん
だ頃、ザ・バンドの連中とフォートップスやマーヴィン・ゲイの
曲を練習していた微笑ましい姿が見えてくる。

ザ・バンドの名曲「ザ・ウェイト」について作者のロビー・ロバ
ートソンはこう述懐している「ぼくはあの曲でカーティス・メイ
フィールド(当時インプレッションズ)のギター・リックを真似
した。それをステイプル・シンガーズ風のゴスペル・ソングと結
び付けてみたのさ」このような優れた折衷感覚が、ロックという
雑食音楽の胆だと思う。ともすれば泥臭いと語られがちなザ・バ
ンドの音楽だが、インプレッションズやフォートップスのノーザ
ン・ソウルの隠し味を忘れてはなるまい。そもそもリック・ダン
コのよく弾むベースは、ダック・ダンの寡黙なそれとは対照的に
メロディックな輪郭を描くものだったから。

当初はロビー・ロバートソンがプロデュースする予定だった『
ロジャー・ティリソン・アルバム』(70年)に収録されたフォ
ートップスのLOVING YOU IS SWEETER THAN EVERは、ボビ
ー・ブルースのフィドルとジェシ・エド・ディヴィスのバンジョ
ーによって半ばブルーグラス化されている。それでも豊かなリズ
ムの彩りに心を奪われる。自分のなかで勝手に線引きしていた南
部と北部の地図が、一瞬にして塗り替えられる。それは筆者にと
ってあまりに鮮烈な体験だった。

メイコン一帯で鳴らしていたグレッグ・オールマンが、ファース
ト・ソロ『レイドバック』で、東海岸で注目され始めたバジー・
フェイトンをギターに起用したこと。ヤング・ラスカルズを範に
したと思しきイングイ兄弟のソウル・サヴァイヴァーズが、マス
ル・ショールズ詣をしつつも、新たにフィラデルフィアのシグマ
・スタジオへと活路を見出していったこと。ロジャー・ティリソ
ンとザ・バンド周辺には限らない。ウィルソン・ピケットがそう
だった。アーチ・ベル&ザ・ドレルズがそうだった。多くの南部
人がノーザン・ソウルにも心開いていった。その化学反応(ケメ
ストリー)こそは、従来の音楽地図をどんどん書き換えていった。


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by obinborn | 2016-08-21 18:55 | one day i walk | Comments(2)  

Commented by kiku at 2016-08-26 19:59 x
小尾さん、どうもご無沙汰しております。お元気ですか?小尾さんのツイッターやブログはいつも見てますよ~。大好きなジェシ・エドとロジャー・ティリソンの名前が出てきたので、久々に書き込みします!
ロジャー・ティリソンの2003年の来日公演、私は当時札幌に住んでいたのですが、都合が付かなくて結局行けず、激しく後悔しています。無理してでも行けばよかったです。
LOVING YOU IS SWEETER THAN EVER最高ですね!この曲、ローリング・ストーンズがカヴァーした音源があることを知り、「おおっ!」と思いました。
東京は暑くて大変だと思いますが、お体に気をつけて!
Commented by obinborn at 2016-08-28 13:55
kikuちゃん、書き込みありがとうございます。ぼくは元気に
しています。ぼくもロジャーのライヴは観に行けなかったんです(涙)ストーンズがLOVING〜を演奏していたとは知りませんでした。YOU=TUで検索してみますね。お返事が遅れてすいません。またぜひ東京に遊びに来てくださいね!

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