映画『怒り』を観て

本日は『怒り』を豊島園シネマで観てきました。吉田修一の
原作を読んでいたので、その再現というよりはどれだけ映像
としてリアルであるかどうかに関心は向かいましたが、これ
が大正解!細かくストーリーを模すのではなく、映画ならで
はのカットアップ、飛躍、移動などがこれでもかという具合
に繰り返され、2時間半余りの長丁場を殆ど感じさせません
でした。夫婦を殺害してから姿形を変えて潜伏する犯人らし
き人物は、それぞれ三人東京と千葉と沖縄で暮らしています
が、映画の主題はけっして犯人探しには向かわず、各地で暮
らす容疑者たちのサブ・ストーリー(ゲイイズム、男女恋愛、
米軍兵によるレイプ)へと拡散していきます。とくに沖縄に
於ける政治的な葛藤、70年代からずっと続く楽天的なユート
ピア志向への冷ややかな眼差しには、筆者も大いに納得出来
ました。この辺りは桐野夏生の小説『メタボラ』で描かれる
”沖縄”に近いのかもしれません。

世の中は不条理に満ちています。誰もが焦燥と不安を抱えな
がら毎日を過ごしています。勿論そうしたモヤモヤは東京と
地方都市(この映画では千葉の勝浦辺り?)と沖縄の離れ小
島とでは温度差があります。それらの違う土地で毎日を懸命
に黙々と生きる人々の群像が、この『怒り』のサブ・テーマ
なのかもしれません。真犯人でさえ、その土地で人々の優し
に触れながら心を通わせていくのです。それにしても時代背
景としては、90年代に小泉内閣が推し進めた新自由主義〜派
遣切り(勝者は一人勝ちして敗者は永遠に負のゲームのなか
に)の残酷過ぎる結末があるような気がします。

けっして顔を見合わせることなく、携帯一本で次の仕事先に
”派遣”される。真犯人がそもそも殺人を犯す要因になったの
は、人材派遣会社の男から電話で言われた「きみ、その現場
は一週間前だよ」と、平然と突き放すように言われたことへ
の『怒り』でした。

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by obinborn | 2016-09-23 17:31 | one day i walk | Comments(0)  

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