エッグス・オーヴァー・イージー『STORY』に寄せて

「ある晩遅くにギグが終わり、近所の狭い新聞スタンドのよう
な店で目玉焼き(Eggs Over Easy)を食べた。ぼくらのバンド
名はそうして出来たのさ!」オースティン・デ・ローンはそう
回想する。69年頃シスコでのことだ。エッグスはやがてチャス
・チャンドラー(元アニマルズ~ジミ・ヘンドリクスのマネー
ジャー)と知り合い、渡英することになる。70年の11月彼らは
チャンドラーの制作下、ロンドンのオリンピック・スタジオで
アルバム用のレコーディングを開始。しかしそのアルバムは様
々な理由により、当時陽の目を見ることはなかった。

今回発売されたボックスセット『STORY』の目玉!となるのは
その時の未発表音源だ。”London '71”と冠されたその全12曲は
まさに翌年の名盤『Good' N 'Cheap』のプロトタイプとなった
もので、今聞いてもまったく色褪せることのないダウンホーム
・ミュージックが開示されている。記念すべきファースト・ア
ルバムが発売されなかった彼らの失望は大きかったが、もうし
ばらくロンドンに滞在するように説得され、北ケンジントンの
タリー・ホで演奏することになった。当時ジャズのクラブであ
ったタリー・ホは、月曜の夜だけロック・バンドにも場所をサ
ーヴした。これがいわゆるパブ・ロック伝説の序章となってい
った。何でも当時はお客さんがたった6人しか居なかったらし
いが、その場所でエッグスはブリンズリーズやビーズ・メイク
・ハニーやダックス・デラックスらと親交を重ねていった。
タリー・ホではオリジナル曲に混ざり、ジミー・リードやサム
・クックの幾つか、ビートルズの「プリーズ・プリーズ・ミー」
ザ・バンドの「オールド・ディキシー・ダウン」などが演奏さ
れたという。

そんなロンドン・デイズに思いを馳せながらこの『STORY』を
聞いていると、何とも言えない感慨が込み上げてくる。ライナ
ーノーツには「パブ・ロックはヒッピー・ロックとアリーナ・
ロックとの狭間にあったムーブメントで、ダウンサイズされた
アンプとルーツ・リヴァイヴァルへの気運があった」と記され
ている。また『Good'N' Cheap』については、「当時は虚飾的
なロック・レコードが多かったが、エッグスの音楽はラヴィン
・スプーンフルのように語り掛けてきた」とも。

偉大なるメンバー、ジャック・オハラ、ブライエン・ホプキン
ス、オースティン・デ・ローンの三人に乾杯を!彼らは特定の
ドラムス奏者を得ることはなかったが、それ以上のものをシー
ンに与えた。当時は46年後にこんな立派なボックスセットが出
るなんて誰も想像しなかったことだろう。かつてのアンサング
・ヒーローたちは歳月とともに勝利を収めた。今は亡きブライ
エン・ホプキンスにこのボックスを手渡したかった。

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by obinborn | 2016-09-28 04:33 | one day i walk | Comments(0)  

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