ビリー・バトラーとともに、夕暮れ時を。

今日は昨日とは対照的に暑い日でした。それでも夕暮れが早く
なり何となく秋を実感する時期になりました。というわけで
さっきレコ棚からアットランダムに引っぱり出してきたのが、
ビリー・バトラーのセカンド・アルバム『GUITAR SOUL!』
(プレステッジ 69年)です。私が所有しているのはOJS(オリ
ジナル・ジャズ・シリーズ)の廉価リイシュー盤で、あの懐か
しい西武百貨店系列のWAVEの値札が貼ってあるので、恐らく
90年代に池袋の同店で購入したものだったと推察されます。

私がビリー・バトラーというジャズ・ギタリストを知ったのは、
彼が昨日紹介したビル・ドゲット・コンボに在籍してからであ
り、およそ55年から60年にかけてビリーはビル・ドゲットたち
とともに初期のキャリアを磨いていきます。そういう意味では
ジャズというよりもR&Bテイストをルーツに持つ人だったのか
もしれません。そんなビリーはやがてビル・ドゲット・コンボ
から独立しソロ活動へと転じます。ブルーノートと並ぶジャズ
の名門レーベル、プレスティッジに招かれた彼は大いに自信を
深め、メルヴィン・スパークスやブーガルー・ジョーンズとと
もに同レーベルお抱えのセッション・ギタリストとして活躍し
始めるのでした。

この『GUITAR SOUL!』はそんなビリーのリーダー・アルバム
第二弾です。まず驚かされるのがA面冒頭の超ファンク・ナン
バーBLOW FOR THE CROSSING。彼は何とワウワウ・ペダル
を駆使しながら、69年前後のジミ・ヘンドリクスと同期するよ
うなエグいプレイを展開しているのです。スペックス・パウエ
ルのファットバック・ドラムスが俄然映えるのも、こうしたフ
ァンク曲ゆえでしょう。ボブ・ブッシュネルのフェンダー・ベ
ースとの絡みも効果的。かと思えばA2曲のGOLDEN EARRIN
GSと、B4のAUTUMN NOCTURNE/YOU GOT MY HEADでは
まるでジャンゴ・ラインハルトのようなジプシー・ジャズを奏
でるのですから多面的ですね。さらにラテン・ビートの応用と
いう50年代からジャズと親和性が高い領域については、B面3
曲めB&B CALYPSOのお遊びを、余裕でこなしていきます。

それでもビリーのルーツとなるのは、やはり圧倒的にR&Bな
のでしょう。かつて同じ釜の飯を喰ったビル・ドゲットの看板
曲HONKY TONKを堂々とB1に配していることが何よりの証明
です。ちなみにこのHONKY TONKというR&Bインストを私が
最初に聞いたのは、ロギンス&メッシーナのカバー・アルバム
『SO FINE』(コロンビア 75年)でした。ボビー・ダーリンか
らハンク・スノウ、クライド・マクファッター、エヴァリーズ、
チャック・ベリー、さらにクリス・ケナーまで幅広くセレクト
したこの盤は、私のハイスクール・イヤーズの聖典でした(出
来ればもっと評価して欲しい!)

「ビリーは踊るヴァイオリンのようにギターを弾く。あるいは
自ら歌うようなギターを奏でる。私は彼に尋ねた”きみにはどん
なメゾットがあるんだい?するとビリーは答えた”きみが何かを
掴み取った時に自分自身であればいいんだよ。別にそれがラジ
オ局と取り引きする時に、価値あることでなくともさ!”」

1969年の11月に記されたラリー・カートのライナーノーツには
そんな記述があります。ビル・ドゲットのR&Bコンボに在籍し
つつも、チャーリー・クリスチャンの甘美なシングル・ノート
に憧れ、またジャンゴ・ラインハルトとT.ボーン・ウォーカー
を視界に収め、恐らくジミ・ヘンドリクスの台頭も意識してい
たのでしょう。そんなことを思い浮かべながらこの『GUITAR
SOUL!』を聞いていると、当時の音楽状況(ロックとジャズとR
&Bのシンクロナイズのようなもの)が、はっきり浮かび上がっ
てくるのです。

世間一般ではあまり評価されていないビリーですが、彼が60年
代というワン・ディケイドの混沌のなかにあって、『GUITAR
SOUL !』のような名作を残したことにひたすら感謝しています。
あ〜、夕暮れが迫ってきました。

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by obinborn | 2016-10-04 18:02 | blues with me | Comments(0)  

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