ボズ・スキャッグスの72年作『マイ・タイム』を顧みて

先日なんばのphoe~beさんに持ち込んだ音源がボズ・スキャッ
グスの72年作『マイ・タイム』(Columbia PC31384)でした。
けっしてゴリ押ししたわけではなく(笑)マスル・ショールズ
録音を含むプレAOR的な本作なら、このお店にも受け入れられ
るのでは?と思ったからです。いわば土臭さと洗練との超克。
何も私に限らず、ここら辺のさじ加減にグッと来る方々は少な
くないことでしょう。

今でこそAORの象徴となってしまったボズですが、元々はテキ
サス生まれの南部人。やがてシスコに出てスティーヴ・ミラー
・バンドに参加します。そこでもブルース・ライクな感覚を染
み込ませていましたが、やがて独立。ヨーロッパで修行した時
代のデモ録音集(筆者は未聴)もあるようですが、アメリカに
戻った彼はアトランティックと契約し、マスル・ショールズに
向かい、ブルーアイド・ソウルの名盤『ボズ・スキャッグス』
でソロ・デビューしました。デュエイン・オールマンのむせび
泣く押弦ソロが収められたフェントン・ロビンソンのブルース
「10セントを俺に」はとくに評価を高めましたが、すぐにボズ
はコロンビアに移籍し、『ボズ&バンド』『モーメンツ』とい
う2枚のアルバムを、ともにグリン・ジョンズをプロデュース
に迎えながら試行錯誤していきます。グリンとはスティーヴ・
ミラー・バンド時代から旧知の仲。何らかの方向性を彼に委ね
てみようというボズの心の動きはそれなりに伝わってくるので
すが、残念ながら今ひとつ成果を上げることは出来ませんでし
た。

そんな彼が再びマスル・ショールズを探訪して作り上げたのが
このフォース・アルバム『マイ・タイム』です。いわば原点回
帰であり、選曲もアル・グリーンの「オールド・タイム・ラヴ
ィン」、アラン・トゥーサンの「フリーダム・フォー・ザ・ス
タリオン」などR&B色が濃厚に漂ってきます。それでもこれら
2曲をマスルで録音するのではなく、ボズにとって第二の故郷
と言うべきサンフランシスコでのセッションに託したところに、
ボズの卓見を見る思いがします。そのシスコ録音ではサイモン
&ガーファンクルでおなじみのロイ・ハリーの手腕も鮮やか。
次作『スロー・ダンサー』の制作をモータウン~ホットワック
スのソングライター&シンガーであるジョニー・ブリストルに
委ねたボズは、更に都会的なシンガーへと変貌していきます。
私は74年の『スロー・ダンサー』も、76年の記念碑『シルク・
ディグリーズ』も高く評価しています。そこら辺はブラックホ
ークの故:松平維秋さんの価値観との違いかもしれません。そ
れも決定的な感覚の差というか、埋められない断層というか。

ドナルド・フェイゲンのライブを観た友人が、いささか興奮気
味に私にこう語ったことがあります「単なるR&B大好きオヤジ
じゃん!」と。スタジオ録音に精緻を極めたフェイゲンやボズ
がライブという場面で、もっと生々しいブルーアイド・ソウル
へと戻っていく。ふと自分の原点を確かめてゆく。そんな営為
の発露として、私はボズの『マイ・タイム』を忘れることが出
来ません。エディ・ヒントンとピート・カーのオブリ・ギター
が交錯するMight Have To Cryが、私のベスト・トラックです。

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by obinborn | 2016-10-21 01:07 | one day i walk | Comments(0)  

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