ヴァン・モリソンの新作『KEEP ME SINGING』を聞いて

訳もなく雑踏に紛れ込みたくなって、久し振りに新宿の町へ出
掛けてみた。しかも普段の自分なら避けるであろう日曜日に。
こうして休日の町並を眺めてみると、若く放蕩なグループから
仲睦まじそうなカップル、家族連れ、そして杖を付いたお年寄
りまで、本当に様々な人達が町を訪れ、約束を交わし、とめど
もなく談笑し合っていることに気が付く。そうした人々のうね
りが愛おしい。そんななか、果たして自分は一体何をしている
のだろう? とふと思う。

ヴァン・モリソンの新作『KEEP ME SINGING』が素晴しい。
三つ前が『KEEP IT SIMPLE』で、次が『BORN TO SING :
NO PLAN B』そしてデュオ集。直裁なアルバム・タイトルが
続いてゆく。音楽も若かった頃のがむしゃらな唱法ではなく、
ずっと抑制が効いた歌い方だ。キーは明らかに低くなってる。
でもそれに何の問題があるだろう。むしろ音は優しく粒立ち、
言葉が発せられる以前のニュアンスや、言葉にならない想いを
そっと包み込んでいくようだ。私事になって申し訳ないけれど、
ぼくが最初にモリソンと出会ったのは77年作『A PERIOD OF
TRANSITION』あれから38年が経って、今日新宿の町で彼の
新作を購入するなんて、当時は夢にも思わなかったさ。

自分探しの旅を終え、現在のヴァン・モリソンは平穏な日々の
なかで、歌うことの価値をそっと噛み締めているようだ。木々
の葉たちは次第に秋色になる。やがて厳しい季節を迎えながら
朽ちていく。何ヶ月か前の若葉の面影はもうない。そろそろ、
洋服棚から厚いコートを取り出してこようか。いささかの綻び
があったとしても、それは自分に馴染んだ大事なコート。毎年
冬が訪れる度に向こうから「大丈夫かい?」と声を掛けてくれ
るような。きみは元気かい? 夜汽車のシートのなかで寒くな
いかい? 大事だと思われたものを、いとも簡単に誰かに売り
渡してはいないかい?

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by obinborn | 2016-11-06 18:41 | one day i walk | Comments(0)  

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